それ以前の問題である「理想の奥様像」/カレー沢薫のカレーなる夫婦生活

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前回、このコラムは長谷部や大典太(何度でも言うが両名とも二次元の男であり画面から出てくる様子がない)との結婚生活を妄想するのが一番エキサイティングと書いてしまったので、逆にやらなければいけないような気がしてきた。

これは、自ら退路を絶たせる、という担当の巧みな陽動作戦だったのかもしれない。多分こいつはこの方法で100人ぐらい社会的に殺していると思う。

外は秋晴れ、死ぬには(人として)いい日だ。

というわけで、

まず、朝目を覚ましたら、隣に長谷部が寝ているという設定で起床することにした。

私の夫なのだから当たり前だ。まあ長谷部は私より先に起きているタイプだろうから、彼が残したぬくもりや残り香を楽しむというシチュもありだが、それだとマジ過ぎて100人中1億人がここで読むのを止めるため、素人の皆様にも受け入れてもらえるように、あえてベタな方向でいくことにした。すでに誰にも受け入れられていない自信があるが。

私は朝、目を覚まし、寝返りをうった。すると眼前には、すやすやと眠る長谷部の寝顔があった。

…その瞬間、雄たけびを上げて起床である。

実はそういった妄想はあまりしたことがなかったのだが、想像以上にいい意味でマズく(人としては悪い意味でマズかった)、興奮のあまり怒りしか湧いてこない。

「長谷部が私なんか嫁にするわけないじゃん、馬鹿じゃねえの!」

と激怒しながら、ベッドから飛び降りた次第である。

つまりそういうことなのである。

私が自分自身と二次元キャラとの恋愛を妄想しないのは、私がそのキャラにふさわしくないからだ。

妄想なんだから、いくらでも自分を美化すればいいじゃないかと思われるかもしれないが、何故かそれはできないのだ。空想の世界でさえ、自由の翼を広げきれない。そんな人間が漫画家というクリエイティブな仕事についているなど片腹痛い。売れないのも頷ける。