毒親の送り方②警察署でまさかの出会い

画像説明 Johan Mouchet

 警察署に到着後、エントランスの長椅子に座って、刑事さんが来るのを待った。

 外は冷たい雨が降っている。窓をつたう雨粒を眺めながら、私はぽつりと呟いた。「なぜ父は自殺したのかな…」

夫「1985年に政府がプラザ合意に同意したせいだろう」

アル「はっ?」
夫「それで日本は円高になってバブル景気が起こり、やがて崩壊した。お父さんはその煽りを食らったんだろう」

 そうか、父が自殺したのはプラザ合意のせいか…ほんまかいな。と思っているところへ、2人の刑事さんがやってきた。

!?

 思わず『金田一少年の事件簿』のアレが飛び出した。事件である。なんとその刑事(デカ)コンビが、どちゃくそにイケメンだったのだ。

「え、そこ?」と思われるだろうが、平田満みたいなおじさんが出てくると思ったらイケメンが出てきたら、それは事件だ。

 先輩デカは長身でキリッとした目つきの韓流系、後輩デカは小顔でくりっと大きな目のジャニーズ系。拙者は夢豚でござるので「乙女ゲーの世界にワープした??」と汗ばんだ。
しかし今はヒロイン気分を味わってる場合じゃない。一瞬忘れそうになったが、父が飛び降り自殺したのである。

 その後、韓流デカが状況説明&事情聴取をする間、ジャニーズデカは証拠品の写真を撮っていた。「ここの署は顔採用か?」とついじろじろ見てしまう。

 事情聴取は個室ではなくエントランスの机で行われた。「父とはいつから会ってないか?」「最後に連絡をとったのはいつか?」等の質問に、私は淡々と答えた。
我々は被疑者じゃないので、デカたちは親切丁寧に接してくれる。だが韓流デカの眼光が鋭くて、うっかり何かを自供しそうになる。

 警察としては「これこれこういう理由で自殺に至ったらしい」と調書を作りたいのだろうが、私は父の最近の暮らしぶりを知らない。「プラザ合意のせいだと思う」と供述したら、イカれていると思われる。

 誰よりも私自身が知りたかった。父はなぜ自殺したのだろう?