埋まらないデッカい穴
もしかしたら、12年も同じ人と一緒にいるって、すごいことなんじゃないの?ぐらい思ってたんですけど。私ベテランじゃね?て勝手に調子乗りかけてたんですけどね。二階堂ふみ、て。超最新。超フレッシュ。『リバーズ・エッジ』のハルナ演ってんだよね、なんなら高校生じゃん。もう何をもって長い・短いとするかなんて、正解がなさすぎる。私の結婚生活を、何と比べても意味ないことなのかもしれない。
でも、私たちは比べてしまう。自分がセーフなのか、アウトなのか、比較して答えを教えてくれる物差しをいつも欲してしまう。こんなダラ嫁の私ですら、こういうコラムを書かせてもらってたり、結婚12年だったりするせいで、不安を抱えたお嬢さん方から質問を受けることがとても多い。
「どうして私、結婚できないんでしょう?」
「どうしたら彼氏が結婚してくれますかね?」とかね。
そんなときはケースごとに相手のお話を伺って、答えられる範囲で私なりに真摯にお答えしているつもりだけど、ぶっちゃけ、本当はそんな質問の明確な答えなんぞ、「ない」のです。
あるとすれば、どう言ってもらったら楽になれるか、その人が望んでいる答えっぽいフレーズがあるだけ。プスプスと黒い煙を立てる焦燥感をいっときだけ鎮火する、付け焼き刃のプレゼンがあるだけ。わかる。だって、私もそんな感じだった。自分には世の中に出て勝負できるものが何もなくて、でもなんとかして世の中から「セーフ!」って言われたい。
そんな風に焦っていると、結婚って、なんとなく行きたい場所への片道切符のようなものに見えるのだ。少なくとも、結婚してりゃ「アウト!」って言われにくいよね、って。
私にはこれがある!と胸を張れるものが見つからないまま、我々はアンジェラベイビーのウェディング写真を見て出産のニュースを聞き、LINEニュースで佐々木希の妊娠を知る。気の合う友達がいても収入が人より多くてもハマれる趣味があっても、そういうものでは埋まらないデッカい穴が自分にあいているような気がしてしまう。そしてその虚しさは、夜中に胸にズンとのしかかるのです。
12年前は今とはだいぶ時代が違うから、私は婚活もマッチングアプリも経験がないけれど、こういう便利そうなものが氾濫しているいまの時代、「私って、アウトでしょうか?」と不安がるお嬢さん方が当時より少なくなっているとは思えない。
むしろ色んな情報が流れ込んでくるいまの方が、触らんでもいいような物差しで自分をはかってしまうから苦しいかもね。でもみんなバカじゃないから、本当はアンジェラベイビーと自分を比べんでもいい、なんてことはとっくに知っているのです。
私たちに必要なのは、お説教じゃなくておまじない。
能力を磨いて自己肯定感を高めなさい、なんて正論は無用です。だから、「どうしたら結婚できますか?」って質問には、私は鼻息荒く「結婚したい!って夢見続けなさい」って答えます。現実なんて見なくていいよ。いくつになっても、美人じゃなくても、メシマズでも、「私は結婚して幸せになれる」ってずっと夢見てた方がよっぽど健康的だし、かわいいよ。大丈夫、あなたの穴は、いつかあなたが夢見たものが必ず埋めてくれるからね。
Text/ティナ助
初出:2018.03.01
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