お互いに理想のタイプではない相手と結婚した話/ティナ助

まったく好みのタイプとは違う男性と結婚した女性の画像

このコラムではすでに何度も語っているけど、私は12年間の結婚生活で「離婚したい」と思ったことがない。それどころか、夫のことを「嫌だな」と感じたことがただの一度もないのです。

そう言うと大抵の人はエーッ!?と仰天し、続いて「すごいね、相性バッチリ、理想のタイプを捕まえたんだね!」と感心されるのですが、決してそういうわけではない。

文字通り「嫌だ」と思う部分がなかった、という程度のことで、夫は私の理想のタイプとは程遠い男性でした。

そしてもちろん、ズボラで怠け者のダラ嫁の私も、夫の理想のタイプからはかけ離れていたはずです。

付き合い始めた当初、夫に理想のタイプを聞くと即答で返ってきたのが、アンジェリーナ・ジョリー、ジェシカ・アルバ、ミランダ・カーのセレブ三大巨頭。えっ、おい。理想が高すぎて、今思い出しても引くわ。

ていうか普通、男性の口からこの3人の名前ってスラスラ出てくる? ミランダ・カーに至っては、当時まだブレイク前でエンジェル(有名下着ブランド ヴィクトリアズシークレットの契約モデル)になるかならないか、ってぐらいだったから女性でも彼女の名前を知っている人は珍しく、「お前そこもチェックしてるのかよ!」と驚いた記憶があります。もう面食い、とかってレベルじゃない。

つまり、彼の理想は、超絶美人でスタイル抜群、キッチリ稼いで男に依存せず、なおかつ良妻賢母となる兆しのある、スーパーウーマンだったのです! …うん、なんで私と結婚したんだろうね。

とはいえ、私だって理想のタイプはキアヌ・リーブスだから、実際に付き合ったり結婚したりする相手が理想カテゴリーに近いかどうかってもしかしたら大した問題じゃないのかもしれない。そういえば私の友人の一人も「理想は岡田将生!」と会うたびに言っていましたが温水さん似の若ハゲ(ごめん)と結婚しました。理想って、そんな深い意味はないのかもしれない。

じゃあ、理想とはかけ離れていたけど相性が良かったのか、という点で考えても、私と夫は合うものの方が少ないです。

まず共通の趣味がない。

ずっと音楽業界に勤めている夫の趣味は音楽なのですが、奇妙なことに彼の興味の幅は90年代のニューヨークハウスとその周辺に限定されていて、音楽に関しては雑食気味な私とは好みも話も合いません。夫はダンスミュージック以外には興味を示さず、信じがたいことにビートルズもストーンズもレッチリもクラッシュもラモーンズもニルバーナもRCもブルーハーツもフリッパーズも聞いたことがない(通ってこなかった、とかじゃなく、耳にしたことがない)、と言い切っていて、んなわけあるか!と驚愕しました。商店街のBGMだってビートルズは流れるじゃん…と驚いたのですが、本当に興味がないため環境音ぐらいに感じて意識したことがなかったそう。

音楽の仕事をしているのにその辺ぐらいは聞いておかなくて大丈夫なのか、むしろ今まで大丈夫だったのか、と問うと、「バンドに興味ない」という一言で片付けられてしまいました。いやバンドとかそういう問題じゃないだろ、って気もするのですが、それで10年以上も音楽業界で糊口を凌いでいるので、たぶん大丈夫なのでしょう。

私だって、ファッション業界の片隅で編集者として食べているけど、すべての有名ブランドのアーカイブに目を通しているわけではないですし、なんなら昨シーズンのコレクションだって、パッと見「コレどこのだっけ」となることが多いです。人のこと言えねーじゃん。