先日、とあるドラマを観ていたところ、ヒロインとその夫が離婚したことを女友達たちに報告をするというシーンがありました。「おめでとう」なのか「残念だったね」なのか、それとも「お疲れさま」か。離婚ほやほやのヒロインに対して、なにをどういえばいいのか、どことなく気まずい雰囲気が漂う中、それでもこれからはひとりで前向きに生きるという決意を述べたヒロインと「おめでとう」と乾杯をするそのシーンを観てふと思い出したのは、かつて女友達から離婚報告を受けた際に、うっかり失言をして非常に怒らせてしまったことでした。
「別れてよかった〜」と言う私に対して
彼女から離婚したことを報告されたその少し前に、わたしもまた当時長く付き合っていて、結婚寸前までいった恋人との婚約を破棄するという出来事がありました。しかし婚約を破棄した側であったので、悲しいとか寂しいとか未練とかはまったくのゼロ。わりと面倒くさい性格の男性だったこともあった上に、別れないと散々ごねられた末の別離だったので、むしろ霧が晴れたように清々していて、ことあるごとに「別れてよかった~!」と独り身に戻れた喜びを嚙みしめていた。元恋人のほうが先に一緒に住んでいた家を出ていったので、ひとりで不動産屋とやりとりをし、引っ越し屋を手配し、必要のない荷物を処分して退去するという、普通に考えたらクソ面倒くさすぎる後始末でさえも、身軽になった喜びが勝って鼻歌混じりでやるようなテンションであった。
一方で女友達の離婚の原因は、夫側のモラハラ。しかしパート主婦であった彼女は、これからの生活に不安があって、離婚を決意してからも、なかなか踏ん切りがつかずに別れられないでいたし、離婚に至った後も「本当によかったのか」と自分の決断に自信が持てないようでもあった。そんな状況で「いやー、別れてよかった~! 身軽~!」を連呼しているわたしにたぶんイラついたのだと思うけれども、「婚約破棄って慰謝料とられてもいい案件だし、世間的にはバツイチと同じようなもんだと思うよ」というようなことを言われたので、わたしもちょっとムッとして「でも、結論として慰謝料も払わないで済んだしバツイチでもないし」とうっかり仕返してしまったところ、案の定、揉めることになり、それから疎遠となってしまった。
離婚が深い傷になることも…
婚約破棄に比べて籍の入っている相手と別れるほうが何倍も、それどころか何百倍も大変なことはもちろんわかっているし、一応は(不安定ながらも)職のあるわたしよりも、扶養内でしか働いていない彼女のほうが別れを決意するのは難しいのもわかっている。わりとコンサバティブなタイプだったから、籍にバツがつくことも嫌だったのかもしれない。けれど、先に感じ悪く当たってきたのは彼女のほう。いや、別れたことにウキウキしているわたしの態度が厭味のように感じたというならば、彼女を怒らせたキッカケはわたしのほうにあるとも言えるけれども、とにかく離婚というものが深い傷になる女性もいることを忘れてはいけないと、女友達とグラスをカチンと合わせる度に、深く己を戒めるのであった。乾杯!
Text/大泉りか