名字を変えたくない理由

たしかにあなたの言うように、わたしたちの親世代は男性が女性側の名字に変わることに対して抵抗感がある人も少なくないでしょう。男性が女性側の名字になる=婿養子になる、と勘違いしている人も結構いるくらいですから。
それにしても涙を流して訴えてくる彼のお母さんはなかなかの強敵ですね。
「うーん、ちょっとそれは……」と遠慮がちに口を挟んできていたとしてもだいぶ嫌なのに、涙を流してまでとなると余程受け入れがたいことなのでしょうか。

わたしには子供がいないのもあり、息子が結婚して彼女の名字になることにどうしてそれほど受け入れられないのかは理解し難いのですが、特段の信念もなしに「だってそういうものだから」という根拠の無い一本鎗の主張、なおかつ「周りからどう思われるか……」と世間体を気にするだけの説得力のない抵抗をする相手に、心情を理解してもらって許しを得るのは難しいだろうな……と思います。
あなたは名字を変えたくない理由を丁寧に書いてくださいましたし、きっと同じように彼のお母さんにも説明したのでしょう。

名字を変えたくない理由の最初の2つはあなた自身のアイデンティティに大きく関わる部分なので「なるほどな」と思ったのですが、3つ目の理由は筋が通っていないのではないかな、と疑問があります。
「姉妹だから」というのは、客観的に見れば「名字が途絶えてしまうもんね」と理解を得られやすい理由となるのかもしれません。でも、他にも親族がいるかどうか、妹さんの結婚観などはわかりかねますが、あなたが名字を変えることで何か大きな問題や影響が出てしまうのでしょうか。

「姉妹だから、名字を途絶えさせないために男性側に名字を変えてほしい」というあなたの考えと、「女性が男性側の名字に変えるものでしょう」という彼のお母さんの考えが決して同じだとは言いません。
ですが、3つ目の意見を説得の材料にすることは、彼のお母さんと同様に根底にある固定観念に基づいた自分の都合を相手に押し付けていると捉えられかねないため、古(いにしえ)の慣習に影響されたものではなく、あなた自身の人生とポリシーで戦うことをおすすめします。

パートナーの親を嫌いでもいい

相手が誰であろうと関係性がどんなものであろうと、どうやったって相容れない、理解し合えない部分はあります。
もちろん、配偶者の親とは良好な関係を築けたほうが望ましいとは思いますが、絶対に仲良くしなくちゃいけないわけではありません。パートナーは自分で選べますが、その親は自分で選ぶことはできないため、運の部分が大きいですから。

愛するパートナーを育てたという点で、パートナー自身とその親とでは価値観が似ている部分もあるのかもしれませんが、あくまでも別な人間ですから親を反面教師にしていたり、自立して社会に出てから親とは関係のない考えを培っていることは大いに考えられます。
パートナーの親に対して「あまり合わないな」と思ってもいいですし、なんなら別に嫌いだっていい。大好きな彼を育ててくれたんだから好きにならなくちゃ、良好な関係でいなくちゃ、と思わなくていいのです。
まずは、そのプレッシャーから解放されることをおすすめします。

あなたは相談文に「彼のお母さまは何も悪くない」と書かれています。
たしかに女性側が改姓することがスタンダードだと考える世代なのかもしれませんが、価値観のアップデートは能動的にすべきことで、それをしてこなかったというのは彼のお母さんのよくない点です。
今回の件に関して、悪の所在を明確にする必要はないとは思いますが、「何も悪くない」とわざわざ寄り添ってあげる必要はないのではないでしょうか。
「口を挟んでくんなよ!!! うるせーな!!!」くらい心の中で思ったっていいじゃないですか。わたしなら思いますね。

名字についてここまで口を出してくることから、あなたは結婚後もあれこれ干渉されるのではないか、と危惧していますが、それについてわたしも同意見です。
これから先、結婚式、妊娠、出産、子育て、家の購入、同居、介護……どのようなイベントが控えているかはわかりませんが、自分の価値観にそぐわないことがあれば今回と同様の事態になることは容易に想像できます。
もしわたしがあなたの立場だったら、改姓のことでかなりしんどく消耗していたでしょうが、「なるほど、こういう人なのか。早めにわかったのはよかったかもしれないな」と今後のための心構えのきっかけとして捉え、付き合い方を彼と擦り合わせておきます。