どんなものが暴力とみなされるか

どのようなものが暴力とみなされるかは、内閣府が例示して紹介しています。
暴力の形態 | 内閣府男女共同参画局
まず、身体的なものから。

■平手でうつ
■足でける
■身体を傷つける可能性のある物でなぐる
■げんこつでなぐる
■刃物などの凶器をからだにつきつける
■髪をひっぱる
■首をしめる
■腕をねじる
■引きずりまわす
■物をなげつける

ここら辺は分かりやすいですね。平手でうつ、物をなげつけるという一見軽度に見えるものも含まれています。
次は、精神的なもの。

■大声でどなる
■「誰のおかげで生活できるんだ」「かいしょうなし」などと言う
■実家や友人とつきあうのを制限したり、電話や手紙を細かくチェックしたりする
■何を言っても無視して口をきかない
■人の前でバカにしたり、命令するような口調でものを言ったりする
■大切にしているものをこわしたり、捨てたりする
■生活費を渡さない
■外で働くなと言ったり、仕事を辞めさせたりする
■子どもに危害を加えるといっておどす
■なぐるそぶりや、物をなげつけるふりをして、おどかす

ここは「え、それも暴力なの!?」と思う方が出てくるんじゃないかと思います。
大声でどなる、「かいしょうなし」と言う、無視する、大切なものを捨てる、なぐるそぶりをするというのは、手をあげるといった直接的な暴力ではないので、暴力だと認識しないままにやっている、やられているケースもあるのではないでしょうか。
最後は、性的なものです。

■見たくないのにポルノビデオやポルノ雑誌をみせる
■いやがっているのに性行為を強要する
■中絶を強要する
■避妊に協力しない

これは分かりやすいですね。
一応、内閣府としては、

注:例示した行為は、相談の対象となり得るものを記載したものであり、すべてが配偶者暴力防止法第1条の「配偶者からの暴力」に該当するとは限りません。

こういった注釈をつけ、必ずしも法律上の「配偶者からの暴力」には該当しないことがあると書いていますが、(行政機関への)相談の対象となり得るものとも書いています。つまり、これぐらいのことなら、行政機関に相談していい。
(相談機関一覧 | 内閣府男女共同参画局)

加害者も被害者も暴力の存在を自覚すること

配偶者間の暴力を解決するための第一歩は、加害者も被害者ももしかしたら自分がやっていること/やられていることは暴力かもしれないと認識することです。問題と認識しなければ、はじまりません。

ここで加害者だけではなく、被害者も自覚することを促しているのは、被害者にも責任があるということを言いたいわけではないですよ(被害者には暴力の責任なんて一切ありません!)。被害者が自覚しなければ、周りが助けられないからです。

暴力の被害者には、自分自身が悪い、逃げるよりこのままの方がいいと考える人がいます。特に、長期的に暴力が行われているほど、もう逃げられないと思いがち。周囲が手を差し伸べても被害者が「私が悪い。あの人だっていいところがあるし……」と思っていたら、対処に限界があります。

また、加害者当事者としての自覚は、あって当然と思われるでしょうが、本人だけでは厳しいところがあります。というのは、加害者は暴力とは思わず、教育だとか、躾だとか、善意のつもりでやっている可能性があるからです。
「あいつがしっかりしていないからビシッと言ってやった」「いい加減趣味にお金を使いすぎているから趣味のコレクションを捨ててしばらく無視した」……こういう発想は、暴力を否定する人でも容易に想像できるのではないでしょうか。
つまり、加害者は、自分の理想とする家庭を作ろうと考えて、その手段として暴力をしていることがある、ということです。