土浦のギャップ
「金色のコルダ」とは、女性向け恋愛シュミレーションのパイオニア、コーエー?が出した乙女ゲーなのだが、個人的には乙女ゲーの中では地味な方だと思っている。(※私は初代しかやってないので続編がどうなっているかは知らない)
なぜ地味かと言うと、彼らは最後の最後まで「ゲーム内の目的からあまりブレない」からだ。矛盾しているように思うかもしれないが、元祖乙女ゲー「アンジェリーク」だって、「制限時間内ここにいる男食い放題です」なんてタイムセールに呼ばれた、というストーリーではない。主人公は「新しい世界の女王になるための試験で勝つ」ことが目的なのだ。
つまりゲーム自体の目的は男との恋愛でも、ゲーム内では別の目的があるのだ。
それは時として「世界を救う」など壮大なものであったりする。しかし、乙女ゲーなのだ。男とイチャつけなければ、プレイヤーの方が世界を滅ぼす。だがその一方で「お前ら世界平和はどうした」と思わなくもない。
その点、「金色のコルダ」は「音楽コンクールに挑む」という目的からブレない。もちろん恋愛要素もあるが、あくまで音楽。手を握るより、音と音で触れ合おうぜという按配だ。
しかも、学園モノであるにも関わらず、教師キャラが異常に「わきまえている」。乙女ゲーの教師キャラと言ったら存在自体が「事案」なのが普通なのに。「金色のコルダ」は珍しい「通報できない教師」が出てくる乙女ゲーなのだ。
実に硬派なのだが、ディープな乙女ゲーを求めている人にとっては物足りないかもしれない。しかし私は今でも好きだ、土浦がいるから。
土浦はイイギャップの宝庫である。不良が子猫みたいな一発逆転満塁ホームランみたいなギャップではないが、ヒットヒットで5億点ぐらいとっている。
まず、見た目がスポーツマン系。実際サッカー部なのに、ピアノがメチャクチャ上手い。
前言撤回、すでに満塁ホームランだし、球は私の顔面を貫通していった。
そして体育会系は勉強が苦手という設定をつけられがちだが、土浦は得意科目が数学なのだ。他の教科は平均でも数学だけ「9点」取る私にとっては、それだけで失神不可避である。
そして私を一番爆発四散させた土浦のギャップ萌えは、いいか、言うぞ?
?
「革靴はいている」ことだ。
制服にスニーカーを履いてそうなのに、革靴なのだ。これはもう死ぬしかない。
察しのいい読者はもう気づいていると思うが、夫の「良いギャップ、悪いギャップ」だが「ない」だ。
このコラム、基本的に書くことはないのだが、今回ほど「無」なことはなかった。夫は出会ってから今まで「そのまんまな人」だった、イメージから大きく逸脱したことが一度もない。
これは単に私の夫に対する理解が足りなすぎなのかもしれないが、正直、2次元に比べて3次元で起こるギャップというのは大体クソである。
ためしに「おとなしくて目立たない(だから真面目だろう)」と思われている奴を一日観察してみるといい、目立たないことを良いことに、死ぬほどサボっていたりするのだ。
夫のことを理解していない、と言っても、もう10年は一緒にいる。サラリーマンだと思っていたが実は石油王だった、等の良いギャップが発見できるとは思えない。だとすると、掘り下げて出てくるのは「実は借金がある」「浮気している」などのクソギャップのみに決まっている。
だったら今更「夫くんを観察して意外な一面を発見しよう♪」なんて思わない方が良い。財布からアコムのカードか、風俗の回数券が見つかるだけだ。
私は夫のことを頼りがいのある人だとは思っているが、それでも虎に襲われたら、私を置いて逃げるかもしれない。しかし虎に襲われるというシチュに陥ることがなければ一生、そんな本性を見ずにすむのだ。
大切なのは本性よりも、悪い本性が出てしまうような状況にならないように努力することかもしれない。
Text/カレー沢薫
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