プレゼンは有効です

ただ、趣味が同じであれば、揉めにくくなるのはたしかです。

まったく音楽に興味がない人からすれば、スピーカーやら配線やらなんやらにお金を使うオーディオマニアの行動はまったく理解できないでしょうが、音楽好きなら気持ちは分からなくもないですよね。
その分野に対して、多少理解があれば、相手のお金の使い方にも想像が及ぶわけです。

実はこれが家庭で相手のお金の使い方に揉めないためのヒントになります。
その趣味にそれぐらいのお金を使う価値があることをお互いに分かっていれば、相手のお金の使い方にある程度納得できるということ。

だから、数万円、数十万円のお金を、もっぱら自分のために使いたい場合、相手にプレゼンをするというのが有効になります。
仕事でお客さんや上司に自分がやりたいことをプレゼンしますよね。プレゼンなしに商品を売ることなんてなかなかできません。だって、お客さんも上司も、価値が分かっていないのですから。

同じように、妻や夫に対して、どうして自分が趣味にお金を使いたいか、どれだけお金を使う価値があるかを説明するわけです。

一番大事なのはお金の使い方に関するコンセンサス

プレゼンはやったほうが断然揉め事を減らせます。

でも、プレゼンがまったく効かないときもあります。どれだけ一所懸命説明しても、相手が納得してくれず「私にはお金を使う価値があるとは思えない」と言われてしまう。
たぶん、そういう姿が想像できるから、プレゼンなんて本当にするのか、しても意味ないんじゃないかと考える人もいるんだと思います。

では、なぜプレゼンが機能しないときがあるか。これが実は一番重要で、プレゼンが機能しないのは、夫婦の間で、どこまで何にお金を使って、どれくらいお金を貯めるかというコンセンサスが取れていないからなんですよね。

自分が趣味のために数十万円使いたいと言ったとしても、相手の頭の中で「子どもが生まれたら収入が不安定になる」「子どもの教育費にお金がかかるかもしれない」「今は賃貸だけど持ち家が欲しいから、あと数年で頭金ぐらいは貯めたい」ということがぼんやりとでも渦巻いていたら、どんなプレゼンも効果は乏しいです。

長期的な資金繰りに悩んでいる社長に、社員が「新しくこの事業に投資しましょう!」と夢を語ってもなかなか通らず、「うちの会社のトイレは古いので新しくしてください!」という地道な話をしても色好い返事が期待できないのと同じようなことですね。

家庭という小さな共同体でも、長期的なお金の使い方に共通の見解ができていなかったら、趣味のお金に限らず、日々の小さな支出でも揉めることは多々あります。

「趣味のことにお金を使いすぎ!」と夫婦のどちらかに不公平感が生まれているなら、夫婦で何にどれくらいのお金を使うか、将来設計をどうするかお互い噛み合っているか、一度話してみるといいですね。

Text/斗比主閲子