前回のコラムでついに担当から「もう少し夫のことを書け」と難癖がついた。
つまりもっと長谷部(ムスカにゴミのようと形容された内の一人であるお前にも教えてやるが、ゲーム刀剣乱舞のへし切長谷部のことである)のことを書けということかと思ったが、長谷部はどちらかというと「嫁」なので夫の話とは違う気もしないでもない。
つまりリアルな方の夫(大体の人にはリアルしかいないと思うが)の話をしろということだろう。
しかし、それどころではない。
オタクにはよく「現実どころではない騒ぎ」が起きる、生き様が波乱万丈なのだ。
FGOに土方さんが来てしまったのである。
土方さんがわからない奴は、今すぐ士道不覚悟で腹を切れ。新撰組の土方歳三のことだ。
私は歴史上の人物の中では土方さんが一番好きだ。
ここで断っておくが、私は歴史にも史実上の新撰組にもそれほど詳しくない。ただ単に、歴史創作で土方さんは大抵カッコよく描かれているので好き、という典型的かつからっぽな頭に夢つめこんでいるCHA-LA HEAD-CHA-LAオタクである。
一言で言えばミーハーであり、ホンモノの歴史ファン新撰組ファンからすれば苦々しい存在だろうが、こういう奴ほど金を落として歴史業界が潤ったりもするので、痛し痒し臭しキモし、という気持ちで許して欲しい。
その土方さんがFGOに来てしまったのである。
歴史上の人物がゲームのキャラクターになることは珍しいことではない。「三国無双」や「戦国BASARA」もそうだ。乙女ゲーとて例外ではない。「武将とつきあったことないやつはモグリ」と言われるぐらい、歴史キャラものは人気だ。
しかし、FGOは、そんな歴史キャラたちが女体化して出てくることが多い。織田信長も宮本武蔵も女だ。「父上」と呼ばれているキャラが思いっきり巨乳なこともある。
そして沖田総司も女だ。つまり土方さんも女性キャラとして出てくる可能性はあった。もし土方さんが女として出てきたら、私は文句を言っただろうか、いや違う。
「助かった」
その一言しか出てこない。
土方さんが、女、女であったなら、回さずに済んだのだ、ガチャを。
しかし、土方さんは男キャラとて出てきた。しかもかなり土方歳三土方歳三した土方歳三として出てきた。
回すしかないのである、経済を。
ここから先の記憶はない。
わかっているのは、土方さんガチャは終わり、うちに土方さんはいない、ということだけだ。
私は年始の「坂田金時ガチャ」で5万溶かして出ず、たいそうショックだった話を今でもしているのだが、土方さんガチャが終わって気づいた。
「その話が出来るということは、本当に傷ついてなどいない」
叫び声があげられるのは元気だからなのだ。「爆死しました」などとスクショをツイッターにあげられるのは、余裕なのだ。
今回のガチャは、回せば回すほど私は無口になった。口数どころか呼吸数が減ったし、最終的に心臓の躍動感がゼロになった。つまり、すごく静かに死んだ。
これが生き物の死だ、と感じた。断末魔を上げて死ぬなんて芸にしか過ぎぬ。リアルじゃない男のために、すごくリアルな死を感じた。
「クソ運営」
そう言えたなら楽だろう。だが私はそれが言えない。全てが私の、愛、そして金が至らなかった結果としか思えないのだ。それが何より辛い。
「こんなに好きなのに…」
なぜ手に入らないのだろう。まるで恋愛のようだ。
しかし、私はリアルな恋愛でもこんな思いはしたことがない。三十を過ぎて、十代のときですら体験できなかった恋愛の痛み、疼きを味あわせてもらえるなんて、やはり二次元は最高であり、ソシャゲ、ガチャには感謝、圧倒的感謝しかない。みんなやろう。
ちなみに土方さんの御霊に捧げた奉納金は、具体的には書けないが、
ソシャゲ専用口座には10万ほど振り込んでおいた
とだけ記しておこう。
本当にそれどころではないのだが今回のテーマは「夫と一緒にしたいこと」だ。
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