かたちの違う一番や特別があってもいい

あなたは彼との関係を「お互いが特別な存在だと思う」と表しています。
少し厳しい物言いになりますが、“特別な関係”ってなかなか便利で使い勝手のいい言葉だなと思うのです。他者から理解されにくい、むしろそんな簡単に理解したつもりになってもらっちゃ困る……という閉塞的かつ外部からのアプローチを跳ねのける世界を形容しているように感じるからです。

相談文を読む限り、「あなたと彼の関係はそりゃあ特別でしょうね」という感想を抱きます。
友達として、恋人として、セフレとしての関係を経て、さらには浮気という背徳感をも共有しているともなると、適度な安心感とヒリヒリ感が共存している状態。あなたにとって揺るぎない一番で、ずっと忘れられない存在ということは、思い出補正を考慮しても彼は魅力的な人なのでしょう。今さら嫌われる心配もなければ、関係を維持するためのプレッシャーも感じないとなると、かけがえのない存在という認識になるのも無理はありません。

ただ、あなたは彼との関係性に固執していないでしょうか。
もちろん、心の逃げ場所はあっていいですし、むしろあるべきだと思います。
でも、他人と接するうえで必要とされる最低限度のマナー、どういう接し方をしたらお互いが無理なく過ごせるかの試行錯誤、相手のことを知ろうと、自分のことを知ってもらおうとする歩み寄り、そういう努力と思いやりの積み重ねを常にし続けるからこそ、友達でも恋人でも夫婦でも魅力ある関係性が築かれていくはずです。
そういった行動なくしては、ただ都合よく自分が甘やかされる場所にい続けることに疑問を抱けないままですし、現状に苦しみを伴ってもなお一歩踏み出そうという気力すら削がれてしまうのではないでしょうか。

あなたは、自分自身のことしか見えていないのかもしれません。それは、別にいいんです。自分のことがかわいいのは当たり前ですし、わたしも自分のことはとてもかわいいですから。
ただ、あなたの場合はそのせいで自分以外の人間の心の機微に鈍感なように思います。

浮気をしたことに関して「恋人がいるのに虚しさがつのった」と仰っていて、特に旦那さんに対する罪悪感や申し訳なさがある様子も感じられませんし、結婚したにもかかわらず「ずっと彼のことを好きでいよう」と決めた過去の決意を守り続けています。
もしかしたら実生活では旦那さんのこともあなたなりに大事にしているのかもしれませんが、あなたの相談文を読んでいると「旦那さんの気持ちはどうでもいいのかな?」と思わずにはいられないのです。

もちろん、あなたの人生においてどういった選択をしていくかはあなたの自由ですからわたしに咎める権利も、そんなつもりもありません。あなたにとって一番に好きな人が旦那さんではないのは感情の問題なので仕方のないことだとも思います。ただ、少なからず過去を引きずっていて、まだ囚われているのだとしたら、その決断を下したあなた自身のためにも、あらためて今の環境と周囲の人間と向き合うことは必要なのではないでしょうか?

過去に縛られるなとは言いません。「あのときもっとこうしておけばよかった」「どうしてあんなことしてしまったんだろう」という後悔は、大きさや重さに関係なく人生にはつきものだと思います。だからといって、目の前のこと、主に旦那さんと向き合う努力をしない理由にはなり得ません。どうしても、どうしても彼のことが忘れられなくて、一度引き返してみるのも選択肢のひとつだとは思いますが、懐古してばかりの今のあなたが少し心配になりました。

ここまでお話しをしておいて、今さら全てひっくり返すような真似をしますが、そもそも“一番”とか“特別”はひとりだけって、誰が決めたのでしょうか?
そんなの、決まりはないのではないでしょうか。
別に、かたちの違う一番や特別があってもいいと思うんですよね。
後ろばかりではなく目の前のことをもっと注視して、大事なものをたくさん持てるような力強い女性になれるよう願っております。

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この連載では引き続き読者の皆さまからの恋愛相談を募集します。
最後の一歩が踏み出せない方の背中をドーン!と押すため、今にも崖から落ちそうになっている人を腕一本で引き上げるため、誰かに厳しく叱られたい方の左頬をフルスイングで打つため、わたくしポジティブゴリラは日々ゴリラらしく腕力を鍛えてお待ちしております。

Text/ものすごい愛
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読むとどうしても幸せになってしまう。“ものすごい愛” にまみれたサイコーにハッピーな日常エッセイ!