誰かに投影するのではなく、自分で考え導きだすもの

まず気になったのが、「2番目に好きな人と結婚したほうが幸せになれるとネットにも書いてあった」という一文。
率直な意見を言うと、「どれほどの根拠を持って誰が書いたのかもわからないネット記事なんか心から信用すんなよ」といったところでしょうか。

わたしはAMをはじめ、さまざまなメディアでエッセイやコラムを書かせていただいていますが、その際は絶対に決めつけにならないように、読者のみなさんと一対一で向き合っていることを前提に書くことを心掛けています。
AMに寄稿している他のライターさんや作家さんも、決して押しつけにならないよう、自分の考えを丁寧に言語化す努力をしていらっしゃるでしょう。
つらいとき、どうしたらいいかわからないときの救いになるような記事はたくさんありますし、それらを読むことで前向きになれたり選択肢が増えるのはとてもいいことだと思います。

でも、根拠となる部分が不明瞭だったり、アクセス数を稼ぐためによくない切り取り方をしていたり、エンタメとしてのキャッチーさにしか注目せず決めつけとも受け取れるような内容だったりする記事は、真面目に受け止めることをおすすめできません。
あなたがどのネット記事を読まれたのかは書かれていないため判断できかねますが、たとえそれがどんなものであれ、他人の言論に自己を投影することは、不安を紛らわせるための一過性の慰めにしかならないのではないでしょうか。

あなたの今の状況だけを第三者目線で見ると、やさしくて自分を大事にしてくれる素敵な旦那さんとの結婚生活はきっと幸せなはず。
それなのに、あなたは手放しで「いま自分は幸せだ」とは思えておらず、「2番目に好きな人と結婚したのにどうして?」と責任を擦り付けているとも取れる思考に陥っているようにも見えます。
わたしとしては1番好きな人と結婚したほうが幸せになれると思っていますし、そもそも感情に順位をつけること自体あまり好きではないのですが……言ってしまえばそんなの人それぞれですよね。
2番目に好きな人と結婚して幸せな人、そうじゃない人、1番目に好きな人と結婚して幸せな人、そうじゃない人、まったくもって愛情がない人と結婚して幸せになった人、そうじゃない人、いろんな人生があります。

十人十色の人生があって、ひとつの結果が出るまでには必ず様々な過程が存在します。環境の変化や感情の動き、考え方のアップデートなどを経て、「こういう選択をした結果、自分はいま幸せだ/幸せじゃない」という結論に至っているわけです。

あなたがネット上で見つけた「2番目に好きな人と結婚したほうが幸せになれる!」と自信満々に言っていた人も、その人自身の経験から得た結論であって、必ずしもあなたにあてはまるとは限りません。それどころか、背景も事情もよく知らない誰かとの共通点を見出して、それに当てはめたところで、あなたの人生とはまったくの別物なんですから、そこに縋るのは得策とは思えません。
誰かの人生に投影することなく、あなたの人生を一番に考えるのはあなた自身であってほしいのです。

感情が変化するから、幸せを見つけていける

人生で忘れられない人がいる、という話はたまに聞きます。
わたし自身は忘れっぽい性格のためそういうことはないのですが……関係性はどうであれ、過去に人生が交わった人を日常のふとした拍子に思い出すことはあります。
でも、あなたの場合はそうではなくて、今でも彼のことが一番好きで、どんなことがあってもずっと忘れられないでいます。
あくまでもわたしが感じたイメージですが、「心の中だけで彼のことをずっと好きでいよう」という、かつての決意が今のあなたにとって枷になっているのではないかな、と。

それについてひとつ疑問を抱いたのですが、その「ずっと好きでいよう」「一番に大事な存在としよう」という感情って、あらかじめ決めておかなくてはいけないものでしょうか?
そして、それは未来永劫に守り続けなくてはならないものでしょうか? 過去を無理に忘れようとする必要はありません。ですが、「忘れちゃいけない」と決めておくのはきっと違いますよね。

人の感情は変化していきます。
それは、好きだったけれど嫌いになったとか、全く思い出さなくなるくらいどうでもよくなったとか、なにも極端な話ではなく、ふと思い出したときに「前は思い出すと胸が苦しかったけれど今はそうでもないな」「あの経験があったから、今こういう考え方ができるんだな」といった些細な気づきが伴うもの。
年齢を重ねたり、物理的に距離ができたり、さらに時間が流れていくことで自ずと感情が変化するからこそ、人は人生で多くの幸せを見つけて生きていけるのだと思います。
「ずっと好きでいるって決めたから」という過去の決め事が、今も苦しみが続く理由のひとつなのではないでしょうか。
今さら彼とどうこうなろうというつもりもなく、あなた自身の感情だけの問題なのであれば、無理に抗おうせず、自ずと訪れる感情の変化を受け入れてみてはいかがでしょうか。