フラれたら諦める…?ええええ、せっかくスタートラインに立ったのに!と思ってしまう/雨あがりの少女

「フラれたほうが楽なんだよね」

フラれた女性のイメージ画像
by Daria Shevtsova

好きな男から久しぶりにLINEが来た。「元気ー?」とかいう、やる気のないメッセージ。なによそれ、もっと工夫できないの? と思いながら、「元気だよ」にハートマークを3個くらいつけて返す。

適当なメッセージを送ったってコイツは返してくれる、と彼に舐められているのだろう。ムカつく。でも、好きだ。私はこの工夫のない(けど超かっこいい!)男に何度も「好き」と言っては、スルーされたり遠回しにフラれたりを繰り返している。

「そんなにグイグイこられたら困るよ、もうちょっと俺のペースでいかせて」と制止されたことがあった。「フーン、そんなもんか」と思ってその日の夜は控えめにしていたら、なんだか楽しそうにしていたし、ちょっとこちらを口説くような素振りもしてきた。でも、それってすごくうれしいことのはずなのに、「なんか、自由に『好き』って言えないのってつまんないなあ」という感想のほうが強かった。やっぱり私は好かれるより好きでいたい。

かつて、「フラれたほうが楽なんだよね」と言った友人がいた。「だって、ずっと同じように好きでいられるでしょ」と続ける。そのときはあまり意味が分からなくて、「何それ~」と笑って終わりにしてしまったけれど、今ならなんとなく分かる。たしかに相手も自分のことを好きだということが明らかになるのはものすごくうれしいことだけど、それでアガリじゃない。「関係が変わる」ことのはじまりだ。カップルになるとか、未来の愛を約束するとか、一緒に暮らすとか、そういった変化があれば、同時に、この人をいつか失うのではないか、いずれ好かれなくなるのではないか、という不安も発生する。

恋が叶うこと(得恋)と、失恋することの苦しみは同じだと言ったのは、戦後の作家、坂口安吾だ。

<初恋だけがそうなのではなく、何度目の恋でも、恋は常にそういうもので、得恋は失恋と同じこと、眠れなかったり、死ぬほど切なく不安であったりするものだ。>

引用:坂口安吾.『恋愛論』.1947

結局のところ、恋は成就しようが失敗しようが、しんどい。しんどくない恋なんてないのだと思う。両想いを確認しあえばハッピーエンドなんて、残念ながらそんなに甘くないということを私たちは知っている。いっそのことフラれたほうが、関係が変わらないぶん、急に愛する人との距離感が変わらないぶん、楽なのではないか。何度フラれても、「好き」と自由に伝えることができれば、そして同じようにずっと好きでいられれば、それはそれでいいのかもしれないと思ったりもする。