人生は長く、フラれることは終わりじゃない

先日、気まぐれに「質問箱」というサービスで匿名質問を受け付けていたら、「フラれたことはありますか? その理由は?」とか、「フラれたらどうしますか?」といった質問がけっこう届いた。でも、フラれるのに大した理由なんかないと思う。私自身、他人の好意をお断りするとき、たいていウソの理由を言うだからだ。会社を円満退職するために適当な理由をねつ造するのが一般的であるように、フるときに本当の理由を言う人もたぶん少ない。だから理由なんか気にしても意味ないなと思う。

だからフラれたって特別に何もしないし、ただ「生きていく」、そして「好きでいる」ということしかない。「フラれたら死ぬ」とか、「フラれたら恋を諦める」なんて言う人もいるが、ええええ、好意を伝えてやっとスタートラインに立ったところなのに、一度フラれたくらいで思いつめなくてもいいのに……! と思ってしまう。

人生は長く、フラれることは終わりじゃない。実際、よく考えたら、フラれて失うものなど何もない。ちょっと恥ずかしいとか、寂しいとか、それくらいのもんで、基本はノーダメージだ。恋愛感情の続行に支障はない。

好きな男との久しぶりのLINEは、3回くらいやりとりをして終わってしまった。何のために連絡してきたんだろう。私のことキープしておくためかしら。ちょっとムカつくけれど、まあ、それでいいかなとも思う。私自身、長く好きでいたいから。彼だって、5年後に私のことを好きでたまらなくなるかもしれない。あるいは50年後かもしれないけれど。

フラれるということは、嫌われていると知らされることではなくて、「今のところふたりの未来を約束しない」ということだと私はとらえている。だから、ポジティブに考えれば、いつか、もしかしたら、ドラマチックな展開があるかもしれない。そこに生きる希望がある。

ああ、人生も、恋愛も、思い通りにならないことばっかりだ。でも、だからこそ、したたかに、生きていくしかない。

そういえば、最近ちょっと高価なリップクリームを買ってみた。笑われるかもしれないけれど、好きな男といつか老人ホームなんかで劇的なキスをするとき、やわらかい唇でいたいから。

Text/雨あがりの少女
初出:2020.11.12