「モテたい」。ちらっと思ったことがある人は多いと思うのですが、意外とふわふわした言葉です。
何もしなくても老若男女から言い寄られまくりたい? 意中の人に必ず好かれたい?
次から次へと恋人をつくりたい? それとも、なるべく多くのワンナイトラブがしたい?
『アルフィー』の主役、アルフィーはその全部でも叶えられそうな天性のプレイボーイです。
モテまくる「本物のハンサム」
イギリスからとびきり甘いマスクを引っ提げてニューヨークまでやってきた彼は、今はリムジンの運転手。いつか経営する側に回ろうと思いつつ、今は様々な女性との「出会い」を楽しんでいるところ。
アパートでは隣人の老婦人におべっかを使ってお掃除などをやってもらい、仕事のついでに人妻と車内で逢瀬を楽しんだら、その足で自宅より居心地のいいガールフレンド宅へ向かい手料理とシャワーを楽しむ……とまさにやりたい放題。
演じているのはハンサムの中のハンサム代表・泣く子も見惚れるジュード・ロウ。
男性は顔じゃありません、ありませんけど、なんか説得力が違うぜ……。
「女は生活できるくらいに稼いでいてそこそこウマの合う男なら、腹筋なんて気にしない。男が気にしてるのは顔・胸・おしりだけどね」
「道を往く女性たちは全員が特別で、それぞれの魅力がある。一人だけなんてどうやって選ぶんだ?」
「稼ぎの方は日々の生活さえ賄えてればいいんだ。墓場で一番の金持ちになっても意味ない」
「人生にはワインと女だ。でも女と女ってのも悪くない」
四次元の壁をぶっ壊して画面越しに語りかけてくるアルフィーも面白いです。
ブランドものだけど地味なジャケットには敢えてピンクのシャツを合わせるとキマる、とかね。
本当にキマっていたので、男性陣ぜひそうしてください。
変わらないプレイボーイの中の変化
一人の女じゃ満足できないアルフィーですから、当然誰にもコミットなんてしない。
セフレの人妻が「夫よりも貴方と一緒にいたいわ♡」と甘えてくれば関係を切り、ガールフレンドに「愛してる♡」と言われれば「ありがとう」と答えながらキスしてうやむやにしてしまいます。
常に複数同時進行で、誰かが去っては誰かが入る。あのねえ、大縄跳びじゃないんだから。
この映画は、決してアルフィーがたった一人の運命の女と出会いピュアでロマンティックな真実の愛に目覚める! みたいな話ではありません。人間の生き方ってそんなに簡単に変わりませんもんね。
しかし同時に死ぬまで方向転換をせずに生きていく人というのもまた少ないもの。
アルフィーの身にはある日を境にいろいろな出来事が降りかかります。親友とその恋人との関係、男性機能の不振、超カワイイのに超情緒不安定な彼女との出会い、ゴージャスマダムとの豪奢なデート。女たちとの記憶が積み上げられるにつけ、アルフィーは小手先の愛し方をしてきた自分と、本当の意味で「どんな女にも替わりはいない」ことを思い知ることに。
「いつでも誰かが受け入れてくれる」と「いつでも受け入れてくれる誰かがいる」は全く違う。
誰にも縛られたくないアルフィーは最後にどんな人生を望むのか。
プレイボーイにもその志願者にも、そしてもちろんプレイボーイに困らされた女性たちにも見届けてほしい一本です。
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