「いい感じ♪」で世界を全肯定するローラの処世術
ローラのキャラクターの特徴、それは世界のありとあらゆるものへの、“ざっくりとしたあいまいな肯定”です。
彼女のコメントは、そのほぼすべてが「オッケー、いいよー」「ん~、そんな感じ」「いい感じ♪」といった“からっぽだけどポジティブ”なフレーズで占められています。
相手の言うことに理解や同意ができないときも、「ふーん、そうなんだ~」と受け流し、「ん~、わかんない!」とはぐらかすことで、否定や拒絶を極力避けていることがわかります。
そのあきれるほどテキトーなリアクションには思わず脱力させられますが、私たちはなぜか彼女に不快感を抱くことはありません。
それは、彼女が決して否定や拒絶をしないからであり、私たちが他人とのコミュニケーションに求めているものが、究極的には「オッケー」と「いい感じ♪」の2つだけだからです。
みなさんも思い返してみてください。
かつては相手のブログ記事に対して、トラックバックやコメント機能で自分の意見を発信したり、メールを送るときも絵文字や顔文字をいっぱい使ったりしていたと思います。
ところが今では、おもしろい記事には“いいね!”ボタンを、スマホのメールツールで話しかけられたときにはスタンプを一発押せば、「読んだよ!」「そうだね!」という意思表示になります。そして、それ以上深入りして自分の意見を述べる必要はありません。
求められているのは“ゆるやかな肯定”のみ。すなわち「オッケー」と「いい感じ♪」なのです。
これを、“コミュニケーションのローラ化”と、今ここで勝手に名付けたいと思います。
だからといって、「現代人のコミュニケーションが、表層的で希薄なものに……」などとくだらない批判をするつもりはありませんよ。
逆に、私にはこの“ローラ化するコミュニケーション”が、無用な傷つけ合いやディスり合いを避けるための高度なライフハックに思えて仕方ありません。
自己主張するより、からっぽのほうが愛される。
反論するより、聞き流したほうがカドが立たない。
拒絶するより、テキトーにあしらったほうがラク。
否定するより、肯定したほうがうまくいく。
思えば、男性の言い分を聞き、顔を立て、ときに受け流し、ときにバカのふりをしてコミュニケーションを円滑に進めてきたのは、いつだって女性でした。
ローラは、そんな女性特有の“生きる知恵”をとことんデフォルメしてみせることで、もはや男性だけでなく現代人すべてが抱えている“肯定されたい承認欲求”を、テキトーに笑い飛ばしているのではないでしょうか。
「みんなが求めているコミュニケーションって、こんな感じでしょ? いいよー、オッケー♪」
テレビの向こうのローラから、私にはそんな声が聞こえてくるのです。
さて、現時点ではだいぶローラに水をあけられてしまったトリンドル玲奈ですが、私は彼女の中に、木下優樹菜のような日本人に好かれる“ヤンキー的素質”が多分に眠っているのではないかとにらんでいます。
彼女が今後、その眠れるヤンキー気質を前面に打ち出したとき、「ローラ・トリンドル戦争」の勢力図は大きく塗り替えられる可能性もあると密かに思っているのですが、それはまた、別の話ということで。
Text/Fukusuke Fukuda
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