恋愛ドラマ勝手に深読み入門 第13回:『恋ノチカラ』は本当に“等身大のドラマ”だったのか

「好きな恋愛ドラマ」で今も根強い人気

By egor.gribanov By egor.gribanov

 みんな、どう? 最近、等身大で生きてる?

 こんにちは、人生のスケール感を測りそこねている福田です。
今週も往年の恋愛ドラマをあえて見直し、勝手に深読みしていきましょう。

 今回のテーマは、「深津絵里が仕事にも恋にも行き詰まった30歳の等身大OLを演じて、多くの女性の共感を得た『恋ノチカラ』(2002年放送、フジテレビ)です。

 このドラマ、『ロングバケーション』や『東京ラブストーリー』のような王道感こそないものの、「好きな恋愛ドラマ」のアンケートなどでは今も必ず上位に入るほど、女性を中心に根強い支持を受けている作品です。

 大手広告会社に勤める30歳の本宮籐子(深津絵里)は、クリエイター志望だったのに庶務課へ異動になり、仕事にやる気を見出せない毎日。 焦りを感じながら仕事にも恋にも夢を描けず、夜な夜なお酒に救いを求める人生の休憩モードに入っていました。

 そこへ、社内でもやり手で知られる憧れのクリエイター・貫井功太郎(堤真一)から、「会社を辞めて独立するから、君にも加わってほしい」とまさかのヘッドハンティングが!
結局、引き抜きは人違いだったことがわかりますが、社内での存在意義を見失っていた籐子は、給料の安定した今の立場をなげうって退職。
新会社の立ち上げに参加することで、徐々に仕事や恋への活気を取り戻していくことになるわけです。

“先が見えてしまう”30代の諦念と閉塞感

 「この世に生まれて30年と6ヶ月19日。もう恋することなんて、ないだろうと思っていた」 籐子のこのセリフが象徴する通り、このドラマには「30歳」という年齢に対する焦りと諦めが執拗に描かれています。

 2002年の放送当時は、「30歳で恋愛をあきらめるのは、ちょっと早すぎない?」と思っていました。 でも、自分が30歳に近付いたいま見返してみると、籐子が感じている閉塞感って「恋をあきらめる」とはまた違う感覚であることに気が付かされます。
「まだまだこれから」という未来や希望に満ちていた20代とは違い、自分には決してできないことや、頑張ってもうまくいかないことがあるのを悟るのが30代。
仕事でも恋愛でも、「まあ、こんなもんかな」という妥協点や限界点が見えてしまうのが、一番つらいし、しんどいんですよね。

「後先考えずに、相手のこと考えずに、ただ好きだって、素直に言える歳じゃなくなっちゃったよ、私」

 このセリフにあるように、籐子もまた「恋をあきらめている」のではなく、ときめきや衝動よりも前に「先が見えてしまう」気がしているから、恋に踏み出す気が起きないわけです。
このあたりのリアルで適切な描写こそ、女性視聴者が「等身大の自分」を重ねあわせ、共感を得た要因ではないでしょうか。