「女性が自分の体験を晒すこと」について、マドカ・ジャスミン(以降・マドジャス)と佐々木ののか(以降・ののか)とお酒片手に大いに語り合った。
自分の体験を綴る理由が、驚くほどまっすぐであることが判明した2人。後半は、「晒す」ことで毎日がどうなっているのかに、話は移った。
晒してると、こんな扱いは受けますがね!
- そらみ
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それぞれのっぴきならない思いがあって発信してることはすごーく伝わって、その上で後半は、晒す記事を書くことで2人がどんな反応を受けてるのかということを聞いてみたいな、と
「それはもう、大変なもんですよ」と、2人とも途端におじさんのような口調になり、マシンガントークで教えてくれた。あまりにも驚くエピソードが連打されたが、ここに書けるのは、それの100分の1くらいだ。身振り手振りも大きくなる、2人の毎日はよっぽどなようだ。
- ののか
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勿論第一に、セクハラ系は本当に多いですね
- マドジャス
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多いねえええ!
- ののか
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”ああいう記事書いてるんだからいいよね”って男性にはよく言われるし、「好きな人の遺伝子をもらって子供が産みたい」、なんて書こうもんなら”つまり中出ししていいってことだよね”ってニヤニヤ言われたり。そんなこと、日常的にあります
- そらみ
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ありえない……サラッと言いますけど、ド頭かち割れるレベルだよ、それ
- マドジャス
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全然普通にありますよ! でも正直、男性より女性の方が私怖いんですよね
- ののか
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私も女性のほうがかなりキツイ
- そらみ
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え、女性から? どんなこと言われるの?
ここから2人の会話は、急上昇を始める。悔しさと怖さと諦めで、コロコロと表情が変わっていく。
- マドジャス
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もう女性からのマウンティングは、本当にすごいんですよ!
- そらみ
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出たマウンティング! 私ね、巷でよく聞くマウンティングというものが、どうもイメージが付いていなくて…無知で申し訳ないのだけど、どんな感じなの??
- マドジャス
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表向きは思いやりなんですよ。でも思いやるというポーズを利用して、私より優位に立っていくというか。“こんなこと書いて私心配だよ? 大丈夫?”みたいな
- そらみ
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言葉だけ聞くと優しい…
- マドジャス
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そこが厄介なんです。“私だけはジャスのこと理解してるよ”とか、何か大きい仕事しようものなら“色んな人に感謝しないとね”とかとにかくアドバイスをしてくる
- そらみ
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え、知らない人から? それ、イメージしたらすごく腹が立つね。ジャスの活動に、自分が絡んでいるような快感に浸りたいのかな? それによって己の地位向上、みたいな?
- ののか
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精神的オナニーに使われてるなってよく思います。慰み者になっているというか。私のことを自分より下とみなして、安心してるんだと思います
- そらみ
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な、慰み者!? ちょっと待ってくれ、なんてことを言うんだ……
あまりの発言にワナワナしてしまう。
- そらみ
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慰み者って! 自分より下? 全然知らない人からそう扱われていることを日々実感しているというの?
- マドジャス
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知らない人にいきなり前振りもなくものすごく重い相談されるとか、よくあります。相談乗って当然でしょ、みたいな
- ののか
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それすごくよくあります。いつのまにかカウンセラーみたいになってたり
- マドジャス
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なんだそれ、じゃないですか。自分たちは晒す勇気もないくせに心配したり利用したり
- そらみ
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劣等感はきっとすごくあるよね。自分には出来ないという劣等感が刺激されて、だからわざわざ食らいつこうとする。それの武器として恥の文化を利用してるというか
- マドジャス
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え?
- そらみ
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性や過去の過ちは恥ずかしいという文化を利用して、赤裸々に書いてる人は、“恥ずかしいことをしている”って見下してみたり。見下してるからこそ、 “自分は頼られるに値する”って勘違いしてしまったり。劣等感とそこら辺が混じってるのかなあ
- マドジャス
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書いてることだけが本当じゃないし、そのままの扱いされても困りますよね。書いてるままの私だけをイメージして、接されても困ります
「本当に困ってます」と本当に困っている様子で2人は言う。その毎日は、さぞや辛いように思う。
- そらみ
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あーでも、それを呼び起こしてる部分もあるからなあ…!
- ののか
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どういうことですか?
- そらみ
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本当のことだからこその切実さを、最大限出してるのは事実じゃない?それを本当だって思って寄ってくるのは、ある程度致し方無い気はするしなあ……そこまで感じてくれてありがとうな部分もあるしなあ…! 普通は人に晒さない部分を晒す、つまり2人の方から読者と距離を詰めてはいるから、読んだ人の距離が近いのもある程度仕方ない気もするし…
どうも腑に落ちなくて、どこに正義があるか判断がつかなくて、「なんだかなーなんだかなー」と私は騒ぎ「2人の文章がうますぎるんだよ!」と思わず嘆いた。2人は「いやいや」と謙遜しつつ、「それにしてもなー」と騒いだ。誤解しないで欲しい。2人は冷静に「それにしてもなー」なんて言ってない。悶絶して、顔をしかめて、嘆いた。そう、きっと毎日くらっている反応が常軌を逸し過ぎている。 「でもねそらみさん、一番辛いのは、それじゃないんです」とののかちゃんは続けた。
- そらみ
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え? 一番辛いのはなに?
- ののか
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私、同業の人に責められるのが、一番辛いですね。しかも“このスタイルを、読者は肯定してはならない”とか、正義を振りかざして批判してくるのは、違うんじゃないかなって思います
間違いなく、彼女たちしか語れない言葉に、対談は突入する。
<ここまでの乱暴なまとめ>
「晒け出してる」ことで2人が受けてるのは、
・「こういうの書いてるからいいよね」というセクハラ男
・「心配だよ」「私はわかるよ」と理解者ぶり、自己肯定につなげようとする見知らぬ女。
そらみが思ったこと:ありえない! 百歩譲って、セクハラ男が発生する仕組みはわかる。しかし理解者ぶってわざわざそれを伝えるのはなんなんだ? どれだけ暇なのだ? しかし同時に、それを呼び起こしてる側面もあるので、物事は一筋縄ではいかない。