私を翻弄する「攻撃の正体がつかめない」タイプの魔性/本人

何を考えているかわからない魔性の女の画像 byCC0 License

恋に焦がれ、泣かされ続けて人生を歩んだ関係で「魔性とはどんなものか」という依頼に「押忍!過去ログから該当案件いくらでも!」の気持ちで受けたものの、いざそれらをまとめようとすれば割と難しいことに気付く。

というのも、私が見てきた魔性は「よくわからない」だからだ。人を、自分を惹きつけて離さない人というのは、基本的に実態がよくわからず、けれどもやたら強くこちらの心をわしづかんでくるのが得意という印象がある。まるでRPGゲームの名作「MOTHER」シリーズのラスボスが「こうげきのしょうたいが つかめない!」というメッセージとともに甚大なダメージを主人公に喰らわせてくるみたいな感じだ。
「何考えてるの?」「どんな遍歴?」「なぜそんな行動に?」と謎に包んだまま、ただただこっちの好奇心や欲求を刺激してくる策士、あるいは天然。それが魔性というものではないだろうか。

インターネットで遭遇した魔性事例

このテーマを聞いて真っ先に思いついた子がいる。以前インターネットにいた人で、あっ同じ現場行きましたー的なよくある流れでDMのやり取りが始まった。とにかく知識が豊富で、やり取りのテンポも軽妙。その上こっちの「欲しい言葉」が見抜かれているのか、相槌まで気が利いている。例えば夜中にルームシェア相手と恋人がananしだして「彼女もおらずこんな時間まで仕事してるおれは…!」とみじめな気持ちになったのだが、その子は電話するやいなや「窓は開けておくんだよ」とフィッシュマンズ「ナイトクルージング」を引き合いに出し「いい声聞こえそうさwww」とこちらを面白サウンドスケープ現場に変えてくれた。

バイブス高めの業界で働きながらSNSには洒落たメシや小物の写真を並べ、生々しい恋愛エピソードには「これが噂のライブハウス後ろ側お姉さんの実態…!」と笑わせてくれた彼女。いや現実味まったくないくらい贅沢に都会遊びしてる女性っているんすねえとグッときて、その子とのやり取りは当時ブラック企業で昼夜削られていた自分にとって唯一の楽しみだと思っていたときがあった。
けれどもその魅力的な会話の中で、固有名詞はたくさん飛び出すものの、どこか実態が想像つかないような、本性はどこか別のところに隠れているような感じもしていた。