ストーリー

 イケメン弁護士と婚約した娘に会いに、元オペラ演出家の父ジェリー(ウディ・アレン)は妻フィリス(ジュディ・デイヴィス)とローマにやって来る。そこでジェリーは娘の婚約相手の父ジャンカルロ(ファビオ・アルミリアート)の歌の才能に気付き、彼とともにオペラ界への復帰を企てるが、彼はシャワー中でしか美声を発揮できないことが発覚して…。
ピュアな新婚カップルのアントニオ(アレッサンドロ・ティベリ)とミリー(アレッサンドラ・マストロナル)。ミリーが外出中、アントニオのもとに人違いで派遣されてきたコールガールのアンナ(ペネロペ・クルス)が……。一方、ミリーは映画撮影中のスター俳優サルタ(アントニオ・アルバネーゼ)に色目を使われ、食事に誘われる。
 建築士志望の青年ジャック(ジェシー・アイゼンバーグ)は恋人と一緒に暮らしている。しかし、恋人の親友である売れない女優モニカ(エレン・ペイジ)の小悪魔っぷりに負け、恋に落ちてしまい…。
平凡な中年男レオポルド(ロベルト・ベニーニ)は、優しい妻と二人の子どもと穏やかに暮らしていた。だが、ある朝をきっかけになぜか大勢のパパラッチが彼を取り囲み、一躍大スターに。どこに行ってもカメラに狙われ、サインをねだられ、美女に近寄られるはめに。

 以上、4つの群像劇がローマ中を駆け巡る。
それぞれの人生には、一体どのような展開が待ち構えているのでしょうか。

ローマの美しい観光地が、ウディ・アレン流のシニカルな笑いに侵食される

ローマでアモーレ ウディ・アレン アレック・ボールドウィン ロベルト・ベニーニ ペネロペ・クルス ジュディ・デイビス ジェシー・アイゼンバーグ エレン・ペイジ ロングライド GRAVIER PRODUCTIONS,INC.photo Philippe Antonello

 お決まりの作風で毎回異なる刺激を与えてくれるアレン作品。今回は何も考えずにずっと笑えるコメディ要素に徹している。
突然有名になったレオポルドがマスコミに「今日の朝食は?」と尋ねられ、「トーストふた切れ」って平凡に答えたらテレビで『トーストふた切れ!』って大々的に取り上げられる。
たしかに大袈裟な報道なんてテレビでは日常茶飯事。笑いながらハッとさせられることが多いのです。

 そして注目して欲しいのが、ローマの美しい風景の数々。ポポロ広場、コロッセオ、トレヴィの泉、ボルゲーゼ公園などローマのロケーションを存分に発揮。
でもなんか最近、アレン作品はバルセロナとかロンドンとかパリとか海外が多く、この人ただ老後の旅がしたいだけじゃないの? 職権乱用? とも思われそうだけどご安心ください。しっかりと面白い映画作ってます。

 まず、キャスティングのセンスが面白い。ジェシー・アイゼンバーグにずっと寄り添うアレック・ボールドウィンなんて誰が思いつくのか。渋さの無駄遣いです。
さらに、ジャンカルロを演じるのが音楽界で最も有名なテノール歌手、ファビオ・アルミリアートなんだから贅沢!
なのに、本格的なテノールの美声がシャワーの「ジャーー」に混じって美声が轟くんだからシュール極まりない。でもその一方で、ほんの些細な日常こそが幸せであることを教えてくれたりもするのです。

 アレン本人も『タロットカード殺人事件』以来6年ぶりに自ら出演。
頭でっかちで神経質なキャラクターがいつまで経っても変わらないのは、往年の映画ファンにとっても安心できるのでは。