「復讐は創造主の手に委ねる」…グラスが下す決断とは

たけうちんぐ 映画 レヴェナント アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ レオナルド・ディカプリオ トム・ハーディ ドーナル・グリーソン ウィル・ポールター フォレスト・グッドラック 20世紀フォックス映画 The Revenant 2015 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.

血生臭くて狂気すら伺えるグラスの復讐だが、その怒りはすべて愛によるものだ。「息子が俺のすべてだ」とヘンリー隊長に語る彼にとって、最愛の息子を奪われるともう失うものは何もない。ある意味“無敵”なのだ。

 また、この物語はグラス一人によるものではない。白人に奪われた最愛の娘を仲間たちと探すアリカラ族の酋長もまた、彼と同じ原動力で旅をしている。
冒頭のシーンでハンターの一団を襲撃するアリカラ族を、最初は野蛮に思えるかもしれない。だが、彼らのその攻撃性は一人の娘を想う父の愛によるものだ。グラスと酋長の怒りも憎しみもすべて、愛する人がいることで生まれる。しかし、その復讐の先にあるものとは一体何なのか。

 グラスが旅の途中で出会う先住民もまた、愛する家族を奪われている。同じ境遇からかグラスの治療を手伝い、周囲の木々を集めて吹雪から彼を守ろうとする。
愛に溢れた先住民は、憎悪を身に纏うこともなく「復讐は創造主の手に委ねる」と語る。自然とともに生きる彼の言葉が、自然をこの手で奪い続けている我々の胸にズシンと響く。

 復讐を自らの手に委ねるグラスは、そこで何を想ったのか。その結末は、この長い大自然と人類との壮絶な戦いに決着をつけるかのごとく、一人の人間の物語から壮大なスケールのテーマへ着地する。

 坂本龍一の音楽が大自然をより荘厳なものにし、人の手が入り込んでいない未開拓の地を彩る。それは、あらゆる才能が集結して作られた、自然の脅威とともに描かれるサバイバル劇。

 グラスの愛する人のために“生きる”強い意志に胸を打たれ、猛獣も吹雪も縁のない世界に生きている我々の胸に強く訴えかけます。

ストーリー

 1823年、アメリカ西部の未開拓地を進むヘンリー隊長(ドーナル・グリーソン)率いるハンターの一団は、娘をさらった白人を探す先住民・アリカラ族の襲撃に遭う。
命からがら川へ逃れるガイド役のヒュー・グラス(レオナルド・ディカプリオ)とその息子ホーク、そして彼らに敵意を抱くジョン・フィッツジェラルド(トム・ハーディ)。陸地を進み始めて間もなく、グラスがハイイログマに襲われて瀕死の重傷に。高い山を担架で運ぶのは不可能と判断し、余命僅かに見えるグラスを残して先に進むことを決める。

 グラスは予想に反して粘り強く生き続ける。だが、見守り役のフィッツジェラルドがしびれを切らし、先に進みたいがために自らの手でグラスの命を奪おうとする。それを見たホークが仲間に知らせようと声を上げたことで、フィッツジェラルドに殺されてしまう。

 声帯をやられて声も出せず、足もろく動かすこともできないグラスは、ただそれを見ることしかできない。やがて彼は最愛の息子を失った絶望と、フィッツジェラルドに対する憎悪を原動力に、死の淵から蘇る。
復讐心を胸に、300kmの長くて過酷な旅が始まる――。

4月22日(金)TOHOシネマズ日劇他 全国ロードショー

監督:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ
キャスト:レオナルド・ディカプリオ、トム・ハーディ、ドーナル・グリーソン、ウィル・ポールター、フォレスト・グッドラック
配給:20世紀フォックス映画
原題:The Revenant/2015年/アメリカ映画/157分
公式サイト:『レヴェナント:蘇えりし者』『レヴェナント:蘇えりし者』前売券 Text/たけうちんぐ