幽霊でも屋敷でもなく、本当に恐ろしいのは人間

たけうちんぐ 映画 クリムゾン・ピーク Universal Pictures

 誰もいないのに何度も捻られるドアノブ。赤褐色の水が勢いよく流れる水道管。屋敷のどこまでも青暗くて長い廊下ーー。
恐怖演出が隅々まで痒いところまで行き届き、観る者の手足をガシッと抑え付けるようにこの世界から逃さない。

 イーディスの父の死の真相と、結婚相手のトーマスとその姉・ルシールが屋敷に隠した秘密。その2つが一緒くたになって明かされるクライマックスでは、イーディス、トーマス、ルシールの三角関係が一挙に浮き彫りになる。愛に狂った女の恐怖が、幽霊なんて軽く超えるレベルで飛び込んでくるのだ。

 終盤、「あ、あれ?こんな映画だったっけ?」と、良い意味で裏切られる。怖すぎて、逆に笑いが込み上げてくるくらい。そんな“人間の本性”をスクリーンの中でも外でも炙り出す。

 本当の怪物は血と肉でできている。それはトーマスが必死こいて生産する赤い粘土よりもネバつき、繋がりを求めたがるもの。白い雪山と赤い粘土のコントラストがまるで人間の切っても切れない血縁と、妬みや恨みで浮き上がった血管を表しているかのようだ。

 愛とはいかに狂気を孕むものなのか。
ミステリアスな存在だったルシールが次第に正体を明かし、豹変していくスリルに人間の恐ろしさが全部詰まっている。
濃く明るい赤色(=クリムゾン)に塗られたドロッドロの三角関係をお楽しみください。

あらすじ

 20世紀初頭のニューヨーク。
10歳の時に死んだ母親の霊を初めて見て以来、イーディス(ミア・ワシコウスカ)の目には幽霊が見えるようになった。
小説家の彼女はやがて実業家のトーマス(トム・ヒドルストン)と出会い、彼の不思議な魅力に惹かれていく。幼なじみの医者のアラン(チャーリー・ハナム)にも求婚を迫られるが、イーディスはやがて父の突然の死をきっかけにトーマスと結婚し、彼の広大な屋敷に住むことになる。
トーマスの姉のルシール(ジェシカ・チャスティン)とともに3人で暮らし始めるイーディスだが、幾度となく深紅に身を包んだ亡霊たちが目の前に現れる。
「クリムゾン・ピークに気をつけろ」と警告する亡霊たちの言葉の意味とは? そして、トーマスとルシールが屋敷に隠す秘密とは何か?

TOHOシネマズ シャンテほか全国公開中!

監督:ギレルモ・デル・トロ
キャスト:ミア・ワシコウスカ、トム・ヒドルストン、ジェシカ・チャステイン、チャーリー・ハナム
配給:東宝東和
原題:CRIMSON PEAK/2015年/アメリカ映画/119分/R15+
URL:『クリムゾン・ピーク』

Text/たけうちんぐ