あれから何十年経ったか、まるで少年のようにスクリーンに目を輝かせてしまう。上映が始まると劇場内で歓声が沸き立つ。暗くなると「来るぞ〜!」。ルーカスフィルムのロゴが映ると「うぉ〜!」。“A long time ago in a galaxy far far away”で「うわ〜!」。
そして、あの音楽が始まると拍手喝采。まるでライブ会場のような盛り上がりに、思わず胸が躍る。
……なんて、話に、ついていけない人の声の方に耳を傾けたい。
フォースって何? ダークサイドって? てか、ダースベイダーって中の人がいたの? その真相を知るには6本分の前作を復習しなくちゃいけない。気が遠くなる。なんて思ってはいないでしょうか。
その必要は全くありません。本作を観れば一目瞭然。『フォースの覚醒』はある意味『スター・ウォーズ』シリーズの総集編であり、間口の広い入門編なのです。
言わずと知れた世界中が待ち望んだ『スター・ウォーズ』シリーズ最新作。1〜6作目を手がけたジョージ・ルーカスが退き、今回の7作目はハリウッドを代表するヒットメーカーJ・J・エイブラムス監督がメガホンを取る。以前は『スーパーエイト』でスティーブン・スピルバーグに、本作ではジョージ・ルーカスに、リスペクトを痛いくらいにリスペクトを込めています。
新ヒロイン・レイ役にデイジー・リドリーが無名からの大抜擢。『アタック・ザ・ブロック』で悪ガキを演じたジョン・ボイエガや、アダム・ドライバー、ドーナル・グリーソンといった新キャストに加え、マーク・ハミル、ハリソン・フォード、キャリー・フィッシャーといったオリジナル3部作のメインキャストも勢ぞろい。同窓会と入学式が一気に行われる新シリーズ。その魅力とは?
“新参”と同じ目線に立ってくれる新キャラクターたち
本作がシリーズの入門編である理由として、新たなキャラクターが『スター・ウォーズ』の世界観を熟知していない点が挙げられる。
新ヒロイン・レイと、脱走兵・フィンの視点はまさに“新参”そのもの。「ジェダイ」も「フォース」も話でしか聞いたことがなく、「ルーク・スカイウォーカー」も伝説としてしか知らない。
これら3つの単語はシリーズを味わったことのない人にとって、すでに疎外感を覚えるもの。しかし、新たに加わったキャラクターがこうした“新参”の観客と温度差がないため、本作で初めてシリーズに触れる人でも目線を置きやすいのだ。
それでいて旧シリーズのファンを喜ばせるオマージュの連続と、もはや世界共通言語になった固有名詞の再登場。実際、初日初回の劇場では「R2-D2」や「ハン・ソロ」が登場すると拍手が起きた。その上で個性的な新キャラが物語に振り幅を持たせる。
極めて現代的なダメ男子っぷりを発揮するフィン。レイへの不器用な愛情を注ぐ姿が一周して可愛い。中二病感溢れる黒ずくめのカイロ・レン。ダースベイダーに憧れてコスプレをして、突然キレたりして周りに距離を置かれている。これまた一周して可愛らしい。
そんなちょっぴり“今風な”キャラクターが暴れ回り、一切飽きることなく小刻みに物語が進んでいく。
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