ハッピーエンドは現実でも起こりうる?
サマンサが次第に心を打ち解けていく相手は、青年・ルイス。
ルイスが車中で何気なく「エリオット・スミス」の曲を流し、理由もなくサマンサが涙するシーンがある。
エリオット・スミスもまた両親が離婚したミュージシャンであり、自ら選曲したジョシュ・ブーン監督自身が多感な時期に彼の音楽に身を寄せていたことが想像できる。
ある意味、サマンサもラスティも自身の青春時代を投影した人物だからこそ、まるで実在するようにリアルで体温を感じられる。
何より感動的なのは、監督自身の“ハッピーエンド、その後”の指標がきちんと示されていること。ラスティが憧れのスティーブン・キング(なんと本人出演!)と電話で会話するシーンがあるが、彼はジョシュ・ブーン自身の憧れの存在でもある。
そんな彼の次回作がスティーブン・キングの小説『ザ・スタンド』の映画化なのだから、物語だけでなく、たとえ愛を失い、疑い、恐れても、いつかハッピーエンド(に向かうまで)が書けることを現実でも証明してくれるのです。
サマンサの冷めた視点から始まるのに、こんなに熱い気持ちにさせてくれるとは。
もし愛について悲しみに暮れていても、人と人が出会う限りその憂鬱は長くは続かない。この映画の登場人物とジュシュ・ブーン監督の人生が、観る人の背中をそっと押してくれることでしょう。
6月27日(土)、新宿シネマカリテほか全国ロードショー
監督:ジョシュ・ブーン
キャスト:リリー・コリンズ、ローガン・ラーマン、グレッグ・キニア、ジェニファー・コネリー、ナット・ウルフ
配給:AMGエンタテインメント
原題:STUCK IN LOVE/2012年/アメリカ映画/97分
(C) 2012 Writers the Movie,LLC12
Text/たけうちんぐ