人の一生は限られている。その中で叶えられる夢は少なく、また愛を実現するのも難しい。
「この人と私は運命で繋がっている!」
そんな確信をもてることが、全世界でいくつ起きているんだろう。その1年後、いや1ヶ月後、はたまた1週間後、その確信はあっけなく切り裂かれて、また新たな「運命の人(自称)」とめぐり合うことになる。
愛はいくつも叶わず、朽ち果てていく。誰もがそれを分かっている。でも、本作はその事実に刃向かう。愛は運命なんだと、必然なのだと、時空の狭間で吠えている。
『カフェ・ド・フロール』。まるでオシャレ女子が嗜むアート系映画の匂いがするタイトルだが、その実態は激情に満ち溢れたラブ・ストーリーなのです。
『ダラス・バイアーズクラブ』でアカデミー賞3冠に輝き、その名を知らしめたジャン=マルク・ヴァレ監督の過去の作品から、このような傑作が掘り出されました。
歌手、モデルと幅広く活躍するヴァネッサ・パラディを主演に、1960年代と現代で時も場所も違う愛が交錯する。
過去のパリの街の片隅でダウン症の息子を持つシングルマザーをヴァネッサが演じ、現代のモントリオールで離婚後の生活に悩むDJの男をミュージシャンのケヴィン・パランが演じる。
二つの時代を繋げるのは、マシュー・ハーバートの名曲『カフェ・ド・フロール』。ピンク・フロイド、シガー・ロスらの曲がそれぞれの愛を彩り、全く新しい“音楽映画”を作り上げています。
“運命”は存在するのか?
【簡単なあらすじ】
1969年のパリ。美容師として働きながらダウン症の息子を女手一つで育てるシングルマザーのジャクリーヌ(ヴァネッサ・パラディ)は、息子を普通の学校に通わせ、その成長を生きる糧にしている。
しかし、ある日ダウン症の少女が転入し、息子とその子と片時も離れないことが学校で問題になる。学校から専用の施設に入れるよう提案されるジャクリーヌだが、断固として受け入れない。
一方、現代のモントリオール。人気DJとして活躍するアントワーヌ(ケヴィン・パラン)は2人の娘と恋人と何不自由なく幸せな日々を送っている。
だが、彼の別れた妻キャロル(エレーヌ・フロラン)は離婚の傷が癒えない。互いに運命だと確信していたアントワーヌの心変わりを受け入れられず、違法ドラッグの影響から“小さなモンスター”の幻覚を見るようになる。
キャロルが見る“モンスター”の正体とは?そして、全く接点のない過去のパリと現在のモントリオールの二つを結びつけるものとは一体――。