青春の“自由”は簡単に手に入らない?
煮え切らないし、もどかしい。どうも上手くいかない。三人とも輝いているのに、心がくすんでいく。
ポップで色鮮やかに描かれる青春ドラマなのに、美宝が心仁の浮気現場を見て涙したり、忠良のあまりに深い想いに胃が痛くなったりしてしまう。
三人が幸せになる手段なんて無いのでしょうか。自由を手にしようと学生たちを煽り、民主化運動のデモの最前線にいる彼らでも、青春の中の“自由”からどんどん遠ざかっていく。むしろ社会革命の方が手軽じゃないかと勘違いしてしまうほど、その恋はあまりにもハードモード。
気持ちが大きくなりすぎて、その分嘘の数が増えていく。本当の気持ちを告げることが、関係を壊すことに。思い出を失うことに。
大切な人を心の中から消滅させてしまうことを恐れて、美宝は忠良を想い、忠良もまた、誰にも言えない想いを抱えていくのです。
移ろいでいく風景に反して変わらない想いの対比
高校時代は教師の指導によってモヒカンみたいだった心仁の髪型とともに、その風景はドラマチックに変化していく。それでも、変わらないものがある。
春夏秋冬と季節を巡るように、高校時代、大学時代、社会人と三段階の三人を映し出す。髪型も服装も街の人々もあきれるくらい変化するのに対して、美宝の変わらない想いが際立つ。忠良の秘密の恋が浮き彫りになる。時代の変化がより一層年月を経た葛藤を感じさせる。
やがて、長い導火線が熱い想いによって次第に溶けていき、爆発する。そのスリルがこの映画の魅力なのかも知れません。
プールサイドに佇む美宝と忠良。笑いの後すぐに涙がやってくる二人のすれ違う想いは、高校時代と変わらない。その想いこそが居場所のような、だけどそこから離れないと死んでしまうような。
美宝の作り笑いと、嘘。観ていると、身に覚えのある切ない想いがこみ上げてくるはずです。