血は繋がってないのに付きまとう背徳感

 禁断の愛とはいっても、それぞれに一切血縁はないんです。
年齢が20〜30才くらい離れていても、リアルに考えてナオミ・ワッツとロビン・ライトって美女だったら「アリ」の範疇。自然に恋愛関係に陥ってもそこまで突っ込まれる事態じゃない。
ただ、問題なのはその母親二人が親友であるということです。

 想像できますか? 親友の息子に身を包まれることを。
考えるだけでありえない。ただ、ロズとリルが若い二人に愛され、それを幸せに感じる気持ちは分かる。トムとイアンはいわば二人の理想の男性像なのかもしれないから。

たけうちんぐ 映画 死ぬまでには観ておきたい映画のこと アンヌ・フォンテーヌ ロビン・ライト ナオミ・ワッツ ゼイヴィア・サミュエル ジェームズ・フレッシュヴィル ベン・メンデルソーン トランスフォーマー TWO MOTHERS オーストラリア フランス 美しい絵の崩壊 熟女 背徳感 禁断の愛 イケメン 母親 2012 HOPSCOTCH FEATURES PTY LTD, THE GRANDMOTHERS PTY LTD, SCREEN AUSTRALIA, SCREEN NSW, CINÉ-@, MON VOISIN PRODUCTIONS, GAUMONT, FRANCE 2 CINÉMA.

 海辺で美しく戯れるトムとイアンを眺め、ロズとリルはそれに見とれてしまう。息子を「私たちの作品」と言い表す。まるで展覧会の絵を眺めるように、美しい作品がこちらに歩み寄ってくるわけです。
自分が生み出した理想に愛されるのだから、拒否できずに受け入れてしまうことはしょうがない。

 やがてそれぞれの尊厳を取り戻すため、関係にけじめをつけようとする4人。トムは俳優として成功し、女優のメアリーと結婚することになる。それでも、ロズの説得にイアンは聞き入れず、納得しない。
イアンから始まった不穏だらけの愛が、脆くて美しい家族の絵を崩壊させていくのです。

愛を止めようとも、時間を止めることはできない

 幾らイアンとトムに翻弄されおうとも、彼らは若くて美しい。
色目を使えば同年代の女の子のハートを掴まえるなんて容易いことで、ロズとリルもそれを分かっている。「この子たちはいつか、私たちから離れていく」と。それを親離れというのか、子離れというのか。

 二人は母親である前に一人の女であることを自覚してしまう。しかし、彼らと決定的に違うのは“時間”なのです。 面白いのはオープニング。幼い少女二人が海岸を活発に走り、笑顔で互いを見つめ合うその顔が急にその30数年後の姿になる。その後、同じようにイアンとトムの少年期の姿も急に青年期の姿になる。それが残酷に時間の経過を表す。

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 愛に限りはなくても、時間には限りがある。
ロズは「時間は止めることができないのよ」と言う。しかし、イアンは「時間を止めてあげる」と囁く。
こんな事言われてしまったらもう後には引けないわけです。惚れてしまうがな!とロズの愛情は止まらない。

 ロズとリルが作った美しい作品は抽象画ではない。具体性を帯びた“時間”こそが、スクリーンを飛び越えて迫ってくる。
その絵の崩壊へのカウントダウンは、刻々と4人に近づいていくのだ。