実家はいわば人生の“中間報告会”

 離婚と不倫の総攻撃。男運無しのオンパレード。昼ドラ感満載の要素なのに、どうしてここまでアットホームな映画なの?
原因は飾らない鹿児島弁と商店街の人々の親しみやすさにある。悪い人が一人も登場しない。それぞれが思いやりを持って生きている。これは離婚版『サザエさん』といってもいい。サザエとフネが離婚していると例えてもいい。ちょっと違うか。

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 それにしても実家ってつくづく中間報告会のようなものだなと。家族が集合して昨今の現状を伝える“公開処刑場”です。
誰にでも身に覚えがあると思う。我が子を心配しているからこそ、「仕事はうまくいってるの?」「結婚はしないの?」「旦那さんとはどうなの?」といった尋問。後ろめたさを抱える我が子にとっては職質レベルです。とはいえ、この映画の場合はその親も離婚しているからどっちもどっち。そこが面白いです。
三姉妹いると三通りの女の生き方があり、それぞれが自分の幸せを計る物差しにもなる。

「男は案外、女の本質を見抜いているものよ」

 夜道、三姉妹が互いの結婚事情を曝け合うシーン。
静江がぼそっと口に出した言葉に、栄と奈美江は反論しない。彼女たちが抱える問題はすべて、男が見抜いた結果なのかもしれません。

バツがつく分、“けじめ”をつけている

 三姉妹は皆、どこかで“けじめ”をつけようとしている。
奈美江は年下の編集者に言い寄られ、徹(夫)との間で揺れている。それはある意味、東京で認められた自分とそれまでの自分のどちらを選択するかに近い。
全てを受け入れてくれる徹に素直になれないのは、奈美江自身が実家・鹿児島か生活の拠点・東京、どちらで人生を過ごすか決断できないことも影響しているのかもしれない。

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 バツがつく時、人は皆決断する。“けじめ”をつけた結果として、「とら屋」の手伝いを決心した静江の離婚、不倫から逃れた栄の成長がある。
奈美江の“けじめ”は誰のためでもない、自分の幸せのためにこの映画の終盤に用意されている。

 バツイチとは、その人が一つ大きな決断をした結果。バツ2とは、二つ決断した結果。
バツとはいっても決してマイナスばかりではない。それは別れた両親の関係に表れている。前夫と互いにとって良い距離感で「とら屋」を運営する母・惠子が、結婚とはまた別の女の生き方を示している。
母のけじめが離婚した静江にとって心強く、奈美江にとっても一つの方法として暗い道を明るく照らす。