「わざと女性にぶつかる人」に怒りたいけど怒れない
──逆に、怒りたいときに咄嗟に怒れない人はどうすればいいんでしょうか。最近、SNSでも話題に上る「女性だけを狙ってわざとぶつかってくる人」によく遭遇するんですが、怒りたいのに何も言えなくて後悔しがちです。
- 小尻
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すごく難しいケースだなと思うんですが、そもそもその相手に本当に怒る必要があるのか、というのはよく考えてみてもいいかもしれません。怒ることは、その結果も自分で引き受けることなんですよ。相手が「わざとじゃねえんだよ!」と言い返してきてトラブルになる可能性もあるわけで、そのリスクをとってまで怒る必要があるのだろうか? と。
──た、たしかに……。でも、そんなことをしてくる相手にせめて何か言いたい、という気持ちも捨てきれません。
- 小尻
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さっきのパートナーの話にも出ましたが、アンガーマネジメントの考え方では、怒りの対象を自分の力で変えられるかどうかをまず整理するんですね。その観点から言うと、おそらくそういう行動をとる人の性格って変えられないんですよ。もしかしたら更生させられる可能性はあるかもしれませんが、関わるリスクのほうが大きい。
──それは、本当にその通りですね。
- 小尻
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正義感が強い方は、そういうときにきちんと向き合うべきだと考えがちです。でも、「もう二度と会わないし、この人は変えられないな」と思ったら、腹が立って仕方がなくても“水に流す”という選択肢もありなんです。
もちろん、それが自分にとって時間とエネルギーを注いででも対処していくべき問題であると思うなら、SNSやラジオ、テレビといったメディアにメッセージを投稿して注意喚起をおこなったり、社会的な活動を始めてもいいと思います。自分にとっても周りの人にとっても、どの選択肢が長期的に見てもっとも健康的か? を問いかけるのが大切です。
──なるほど。自分が人に怒りたいと感じるときって、少なからず「相手にナメられたくない」「正論で言い負かしたい」という気持ちがあったんだなと気づきました。
- 小尻
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理不尽な思いをしたとき、相手に何も言えず悔しい気持ちになるときもあると思うんですが、コミュニケーションは勝ち負けじゃないんですよね。相手と自分は違って当然ですから、もう関わらない相手のことは水に流してもいいし、長期的に関係を築いていきたい相手とは、お互いに“ちょうどいいライン”を探して高め合っていけたらベストなんだと思います。
怒りと向き合ったら、パートナーとの関係も良好に!
──小尻先生のように完璧にアンガーマネジメントできている人が羨ましくなってきます。……ちなみに小尻先生は、最近怒ったことってありますか?
- 小尻
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アンガーマネジメントをしていても、やっぱり怒りを感じることはありますよ(笑)。最近はそんなことないんですけど、昔はよく夫に対して怒っていました。
──そうなんですね!
- 小尻
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人間だから、感情的になってしまうことは正直あります。以前は、相手がおかしいと思ったら相手を責めてましたし。でもやっぱり、相手をいくら責めたところで、反発されてしまったら建設的な話はできないんですよね。
私は、いまでも夫に強い怒りを感じたときは、その場から一旦退却するというのをルールにしてるんですよ。アンガーマネジメントの「タイムアウト」というテクニックです。
──それはたとえば、一旦コンビニに行く……というようなことですか?
- 小尻
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そうですそうです! カーッときたときは、「いまは冷静に話せないから、30分後に戻ってくる」と伝えてその場を離れるようにしています。相手と離れている間に感情の整理ができるのでオススメですよ。
──相手も「そのくらい怒らせることをしたんだな」と気づきそうですし、戻ってくる時間をきちんと伝えるのも親切ですね。
- 小尻
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やっぱり、人との関係はお互いに作っていくものなので。私も、「自分は何に怒っていて、この人に何を伝えたいんだろう?」というのを整理して伝えられるようになってから、夫や子どもとの関係もよくなってきたと実感してますね。
Text/生湯葉シホ