見えてくる生身のナイトプール

 同じ感情を抱く友人たちと勇気を出して、某ホテルのナイトプールに向かった。

 「どんな人がいるんだろう」「みんな何をしてるんだろう」「前戯みたいになってる男女もいるのかな?」
ドキドキしながら到着したホテルはそれはそれは綺麗で、このホテルでいやらしいことが起きているなんてちょっと想像しづらかった。

 プールの受付を済ませ、更衣室に向かう。
あれ?なんか全然平和じゃない?想像していた更衣室は、鏡前争奪戦が起きていて、みんな死ぬほどメイク直してるイメージだったけど、全然そんなことない。

 え?健康ランドかな?
拍子抜けした気持ちでプールに向かうと、夕日がプールに降り注いで、あ、なんか良い風・・

 そしてプールサイドに並ぶソファベッド。これこれ〜!このソファベッドでみんなシャンパン飲みながらイチャイチャするんだろ?見せてみろよ!ほら!来いよ!・・あれ?全然人気ないじゃんソファベッド・・え?

 なんか全然思ってたのと違う。全然嫌な感じがない。嫌な感じを浴びに来たのに。呆然とビールを注文して、椅子に腰掛けた時、来た!巨大ユニコーンだ!巨大ユニコーンに乗って、死ぬほど自撮りするんでしょ?からのナンパでしょ?どうやってやるの?見せて!・・あれ?凄いくつろいでる・・ラッコかな・・?

 なんだか馬鹿らしくなって来た。
このプールで、意地悪な気持ちを持ってるの私だけじゃん。
みんな、それぞれの夏の思い出を作りに来てるだけなのに。恥ずかしい。私、マジでダサい。もうやめよう。人の楽しみに水を差すのって、マジでしょうもない。

 あ〜なんでこんなシンプルなことを、もっと早くに受け入れられなかったんだろう。でも、クヨクヨしてても仕方ない。今日から少しでもダサくなく生きていくために、まずはナイトプールを楽しもう。ビーチボールで遊ぼう。

 友人たちとボールで遊び始めたら、小学生くらいの男の子が無言で近づいて来た。小学生の男の子がいたんかい!!!ナイトプールって、家族連れもいるんかい!!!でもそうか、ホテルだもんね。家族旅行で東京に来て、ここに泊まってるのかな。夜プールに入るなんて、学校じゃできないもんね。

 そう考えると、ナイトプールってめちゃくちゃワクワクするね。なんて思っている間も少年はずっとこっちを見つめているので、恐る恐る声をかけた。

 「・・一緒にやる?」「やる!!!!」

 そこから約1時間。私たちは少年とボールを追いかけ続けた。1時間って、大人がボール追いかけるには長すぎる。でもやるのだ。だってここはプールだし、少年はめちゃくちゃ笑っている。正直お姉さんたちはもう限界だけど、君がそんなに楽しいなら付き合うよ。