誰のあこがれにさまよう
さて、逆モテポイントの解説です。
まず、朝一番からフルスロットで登場した、虫取り少年風のあなたに間違いなく男の子は驚きます。そして、ミックスCDが再生され始めると呆気にとられるでしょう。
「大人になってから知り合ったはずなのに、なんだかこの女の子を知っている気がする。」「十数年前にも、車の中で女の子と一緒におはロックを歌ったな。」
モテを意識しないことで起きるこの記憶への揺さぶりは、効果的な先制パンチとなるのです。
海での姿もモテます。他の女の子たちが日焼け止めを塗ることで、女になったことを主張する中、あなたは塗らない。颯爽と更衣室から出てきて、そのまま海にじゃぼん。しかも飲み物はコーラ。男の子はまたもや、記憶を揺さぶられます。
そして、砂浜に投げ飛ばされながら思い出すのです。こんな1日がかつての夏にもあったことを。そして、その夏が大好きだったことを。
夕日の中で感傷に浸りかけると、容赦無く海に引きずり込まれる男の子。女の子の方が背が高く力も強かった幼少期、戻れないはずの過去にタイムスリップした感覚に溺れ、きっと彼は涙ぐみます。
夜になっても、車に乗っても留まることを知らないあなたの勢い。この状況で、あなたとバイバイしたい人なんていないはず。男の子も女の子もみんな、並べた布団のあなたの隣が欲しくてたまりません。布団に潜り込んで、まだ薄く光っているサイリウムの灯りの下、自分の秘密を打ち明けたい。この子と二人だけの秘密が欲しい。
男の子はあなたの中に、かつての夏、くすぐったい恋心を抱いた従兄弟のお姉ちゃんや幼馴染、同じペンションに泊まっていた女の子の姿を見ます。誰もが持っている二度と訪れないはずの夏の思い出を再現することで、きっとあなたはモテる。だって、子供の頃の夏に思いを馳せない夏なんてないでしょう?
平成最後の夏なんだし、今年はみんなの思い出の化身となって、そこら中を走り回ってみませんか。
Text/長井短
次回は<ねぇ、私たちの自己肯定感は自分で自分のために生み出そうよ>です。
「モテたい!」とは誰もが思っているような願望ですが、私たちはなぜモテたいんでしょうか。不特定多数の人から愛されたい?自分が好きなたったひとりの人と結ばれるためのルート?感情を分解して考えてみました。