終わった恋の足跡を辿る、忘恋会2017。
今年の締めくくりにふさわしい恋愛納めコラムを厳選してお届けします。
今年に一旦けじめをつけて、来る2018年の新しい恋に備えましょう。
「あ、これは別れ話だな」と思ったこと
こんにちは。ウェブ編集者兼ライターの林と申します。
昨年の本欄を読み返して自分のコラムからにじみ出るおっさん感にくらくらした。
若いライターたちのリアルな恋の話の眩しさ! そのまま踊る男女の映像に重ねたらカラオケビデオになるだろう。ロケ地、横須賀だ。
しかし今年も僕のまわりにある恋の話は、家庭裁判所に行ったとか慰謝料の支払いがようやく終わりましたとか、座薬を入れてもらったけど付き合ってないんですとか、キラキラのキラがひとつもないエピソードばかりである。
座薬だけの関係ってあるのかよ。
でも今年、あ、これは別れ話だなと思ったことがある。
僕が編集しているウェブサイトが別の会社に事業譲渡されたのだ。
その話が決まりかけのころ、上司に呼び出された。定期的な個人面談である。
だが、もうすぐ関係が終わることはお互い知っている。それを避けるように僕はヤギとヒツジの鳴き声の違いについて話していた。ヒツジはメーじゃなくてどちらかと言えばヴェーなんですと語る僕に、上司から切り出した。
「今後についてはもう聞いてると思うけど」
僕は人に戻って理解できていると答えた。感情は理性と別なので寂しさを感じないわけではないですが、と言うと上司がこう言ったのだ。
「別々になってしまうけど、これからも仲良くしていこう」
別れ話か!
西日さす会議室、こんな歌謡曲のようなセリフを聞くとは思わなかった。誰ひとり不まじめではない。誠実さの末にこんな真空地帯が生まれたミラクルに感謝した。
別々になったあと、すっかり忘れているのも別れ話である。
Text & Illustration/林雄司
次回は<「愛さえあれば全て解決する」と信じていた、20代最後の恋/寿マーガリン>です。
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