カワウソにとっての親戚

カワウソの血縁にも、大好きな大叔父がいました。親族のみならず、仕事仲間でも地域の付き合いでも、関わる人全てに親切で、一族の長のような人でした。頻繁には会えなくても、人生に迷ったときに「おいちゃんに聞いてみよう」と思える心の支えだったので、亡くなったときには深い喪失感がありました。心もとないこの世へ置き去りにされた気分だったのを覚えています。

新しい親族に囲まれ、甥に向かって「愛してるよ!」と言ってくれる叔父さんを前にして、カワウソは社会人モードが解け、子供に戻ったような心持でした。
そういえば、同じように、こんな風に可愛がってもらって大きくなったなぁ。夫とお互いに「結婚しよう」「そうしよう」と呼吸が揃った理由も、なんとなく合点がいきました。自分の親族とは違う。違うけど同じ、知っている何かを持った人たちなんだ。

そう思うと、心の中に金銀財宝がぞろぞろと列をなして運び込まれたような気分でした。

結婚することのメリット

結婚してまずメリットを感じたのは、誰を愛すればいいのか定まったことでした。どこからか湧いてくる「人を愛したい」という気持ちに、決定的な行き場ができました。
また、義理の両親をはじめ、新しい親族が素敵な人たちだったことで、愛の矛先を1人に向け続けて煮詰まる状況を避けられそうなのは、嬉しい発見でした。恋愛を“2人っきりの小部屋にこもるようだ”と感じていたのに対し、結婚には大きな窓が開かれていたわけです。

これまでの人生をなんとか走ってきたのは、夫1人と結婚するためだけではなく、更にその先にいる家族や親族……なんというか、この「群れ」に合流するためだったのではないか?自分の直接の子供でなくても、親族の誰かに良い報せがあれば、一緒に喜び、幸せを感じる。不幸があれば助け、悩んだり苦しんでいる時は逃げ場になる。これまでそうして可愛がってもらったように、これからは自分が周囲を愛すればいいのだと、そんなことを思いました。