生理でもデートしてくれた彼
長期休暇で実家に帰った際、友達からの手紙が詰まった缶箱を見つけた。手紙と言っても切手を貼ってポストに投函するタイプのものではなくて、授業中にこそこそ書いて、休み時間に手渡しをするようなアレである。
カラフルなペン、可愛いキャラクターもののメモ。当時を思い出させる絵文字、略語、あだ名。たいていは、口で言えば済むような他愛のない内容だった。
差出人は、今でもよく遊んでいる子たちが多かった。けれど、一瞬では顔が出てこない子の名前もちらほら見つかった。Sちゃんもそのひとりだった。
同じクラスになったことはないし、部活が一緒だったわけでもない。どうして仲良くなったのかも思い出せないけれど、Sちゃんがくれた手紙と同じ量を、わたしも書いていたんだろう。
手紙を読んでいくうちに、「そうそう、こういう話をした」「Sちゃんはこういう子だったな」と記憶が蘇ってきた。Sちゃんが片思いしていた先輩に告白して、OKをもらった直後の手紙の文章は、Sちゃんの弾んだ気持ちが伝わってくるようだった。10代にしか書けない、飛び跳ねるような感情豊かで可愛い文章。
以降のSちゃんの手紙には、彼氏がどんなに優しいか、かっこいいのかということが具体的なエピソードとともに綴られていた。その中のひとつが、「生理だって言ってもデートしてくれた」。自分がどういう返事を書いたかは、はっきりと思い出すことができる。「えー!すっごく優しいね!」、だ。
セックスこそが最大のメリットだと信じていた頃
言うまでもなく、「生理だって言ってもデートしてくれた」は「わたしが生理の時は、本来遊んでくれなくても仕方がないのに」という意味を含んでいる。これを読んだ時、自分がどうしてSちゃんと仲が良かったのかわかった気がした。男の子に対する期待値がめちゃめちゃ低くて、こういうことでも「優しい」と思えてしまう価値観が、たぶん似ていたんだろう。
今でこそ、恋人に「生理だから体がだるい」「超眠いむり」「お腹痛いからお風呂沸かして」と抵抗なく言えるものの、当時は――というかほんの数年前までは、男性に生理だと伝えることは「今日はセックスできません」と同じ意味で、申し訳なさすら感じていた。
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