自分を好きになってくれない人や身勝手な人ばかり好きになり、不安定な恋愛関係に陥ってしまう女性たちへ。
「私は最初から私を好きじゃなかった」――自己肯定感の低い著者が、永遠なるもの(なくしてしまったもの、なくなってしまったもの、はなから自分が持っていなかったもの)に思いを馳せることで、自分を好きになれない理由を探っていくエッセイ。
永遠なるものたち009
「心の傷」
その日の昼休み、私は図書室で破られた本を見つけてしまいました。
私の通っていた小学校は学級崩壊が重なっていて、とても落ち着いて過ごせる環境になかったので、それは誰かが訴えることのできなかった恐怖や不満の発露だったのだと思います。
ちょうどその時期、図書室の本が破られる事件が頻発していました。
とは言っても、まさか自分が発見してしまうとは思ってもいなかったので、私は思いきりうろたえ、そしてその周りに、異常事態を察した児童たちが色めき立って集まって来ました。司書の先生はおっとりとした女性で、「あらあら、困ったね」と静かに眉をひそめていましたが、私は自分の心がビリビリに破られたような気持ちがして、周りの子たちに気づかれないように目に涙を溜めていました。
しばらく雨が続いたので、せっかくの晴れの日にあてどもなく歩いていたら、電信柱に貼られた広告が連日の雨によれて破れていて、ふとあの昼休みのことを思い出しました。
いまでもあの時の自分の気持ちはわかるけど、本が破られているのを見つけた衝撃で泣くなんてと、ふっと微笑んでしまいます。生きていると理不尽なことも、想像もつかないようなひどいこともたくさんあって、いまだったらきっと少し不穏な気持ちになるだけでしょう。
歩きながら、「大人になって心が大きくなったのかな」と思いました。
そしてすぐに、「心は大きくならないんじゃないかな」と思いました。
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