自分を好きになってくれない人や身勝手な人ばかり好きになり、不安定な恋愛関係に陥ってしまう女性たちへ。
「私は最初から私を好きじゃなかった」――自己肯定感の低い著者が、永遠なるもの(なくしてしまったもの、なくなってしまったもの、はなから自分が持っていなかったもの)に思いを馳せることで、自分を好きになれない理由を探っていくエッセイ。
永遠なるものたち004
「SWIMMER」
悲しい気持ちになりたくなったので、「SWIMMER」に行ってきました。
「SWIMMER」というのは雑貨屋さんの名前で、少女趣味な文房具や靴下、宝石みたいな指輪なんかが、こどものお小遣いでも買えるような値段で売っています。女の子にとっての駄菓子屋さんみたいなお店です。ほとんどの商品がパステルピンクや水色や、ぽわんとした可愛らしい色でできていて、うさぎや猫などのモチーフが、きらきらとしたレースやリボンと一緒にあしらわれています。
小中学生の時にはお店に入るだけでずいぶんとときめいて、高校生でアルバイトを始めて、大学に進学してからも意気揚々と文房具を揃えにいきました。でも食器やバスマットや、ポットには手を伸ばすことができませんでした。以前は文房具よりも高価だったので躊躇していたのですが、お金を持てる年齢になってからは、どれも家には家族で使っているものがあったので、せっかくならいつか自分が結婚して家を出る時に買い揃えようと思っていたのです。
生まれた頃から近所に晴れ着屋さんがあるせいか、結婚は私にとって揺らぐことのない華やかな幸福の象徴です。
お店の前を通るたびにいつも、ショーウィンドウのウェディングドレスに目を奪われました。きれいなお姉さんのマネキンが着ているドレス。白いやつだけじゃなくて、うすいピンク色のフリルがいくつも重なったものや、デコルテにひまわりがあしらわれた黄色いドレスなんかが飾られていて、こどもだった私はそれを見ながら何度も、「私が大人になっても残っていてね」と願ったものです。
「SWIMMER」の食器やバスマットにも、数え切れないくらい同じことを思いました。
駄菓子屋さんでおもちゃを眺めるこどものように、「いつか大人になったら迎えに来るからね」という気持ちでいたのです。
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