誰かを待つ時間が楽しくなる純喫茶

純喫茶Lawnの写真 Lawn

携帯電話が普及したことによっていつでもすぐに連絡を取れるようになり、以前ほど困難ではなくなったことの一つが待ち合わせだと思います。もちろん私も携帯電話には普段からお世話になっておりますが、じっと待っている時間が減りつつある今だからこそ、たまにはぼんやりと誰かを待つための時間を過ごしてみませんか?

とはいっても全くの手持無沙汰であるよりは、好きなことをしながら落ち着いて過ごせる空間であったら良いですよね。
今回は、そんな時にとても重宝する純喫茶を紹介したいと思います。

ふわふわオムレツのタマゴサンド

純喫茶Lawnの写真 Lawn

JR線、丸ノ内線、南北線を利用出来る四ツ谷駅から徒歩数分の場所にある純喫茶「Lawn(ロン)」は、佐賀県立博物館なども手掛けた建築家の高橋靗一(ていいち)氏の作品で、ひんやりとしたコンクリートの質感と丸みを帯びた形状の入口のコントラストが素晴らしいビルです。

一階席も素敵なのですが混み合っていないようでしたら、店内奥にある螺旋階段をくるくると上がり、二階席へ行くことをお薦めします。
中央は吹き抜けになっていて、空間は左右に分かれています。
その中でも私が特に気に入っているのは左側の吹き抜けから一階席を見下ろせる席です。
一階にいる方たちの話し声までは聞こえないのですが、遠くから様子を眺め、どんな会話をしているのだろうと空想してみるのも楽しい時間です。
また、窓の外を走る自動車を眺めていると、いつも時の流れを忘れてしまいます。

純喫茶Lawnの写真 Lawn

今ではすっかり懐かしいメニューとなったミルクセーキはほんのりレモンの香り。
マスターに秘密を尋ねるとレモンの皮を少しだけ入れているからとのこと。
一緒に注文したいタマゴサンドは、ふわふわのオムレツが挟まれた関西で多くみられるタイプでボリュームたっぷりなのですが、いつの間にかぺろりと完食してしまう美味しさです。

赤く艶やかな椅子に深く腰掛け螺旋階段を上がってくる人々の気配を感じ、店内で流れるマスターの大好きなビートルズに耳を澄ます。
なかなか時間が作れず読めていなかった小説などをゆっくり読むのも至福です。

もし、誰かとの約束がないのであれば「1時間後の自分を待つ」という遊びをしてみるのも良いかもしれませんね。

Text/難波里奈

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※2015年12月18日に「SOLO」で掲載しました