「この人しかいない」大切な旦那と、女のプライドを支える彼氏

「結婚した次の年から、ずっと続いている男はいる。私が女でいる、ギリギリの歯止めをしてくれる人だよね。いなきゃ死んじゃう。でも、いるなんてことをこうやって口にすることは絶対ない」

日頃絶対に口にすることがない彼氏の話に、少し顔が強張る。

「旦那さんとも月一でエッチはするよ。ちゃんとしたのじゃないけどね。旦那も奥さんに対してそんな頑張れないでしょー。私も旦那にそれは求めないし」

そして、彼氏と旦那とのセックスの違いを教えてくれた。
それは、旦那とはディープキスはできない、と。

「チュッチュチューはするよ。でも、ベロベロはできない。前はできたけど、いつの間にかしなくなったし、もしかしたらチュッチュも今後はなくなるかもしれない。旦那との関係だってどんどん変わっていくからね」

ハナちゃんは、我々の顔を1人ずつ見つめながら、さらに続けた。

変わっていっていいの。だって家族だから。離婚するつもりなんかないし、絶対に自分の旦那がいい。旦那大好きだよ、ベロベロはできないけどね。もう親兄弟と一緒で、離れられない」

ハナちゃんの言葉は、あまりにも強かった。
「浮気してんじゃん!」なんてツッコミはもうどうでもよくなった。もうそんなレベルじゃない。さらに言えば、ハナちゃんは韓国に若い彼氏まで持っていた。

「3ヶ月に一回くらい行って、若い彼と遊ぶの。もしかしたら金目当てかもしれないけど、それでいいと思うの。昔おじさんにかわいがってもらってたお返しだよ」

少し舌が回らなくなりながら、ハナちゃんは私と編集部Oに力説した。もう私たちも若くはないが、ハナちゃんよりはかなり歳下だ。

「若いからってみんなかわいがってくれるでしょ? それって大事なことだと思うの。私もそうさせてもらってきたから、若い子にはとにかく気持ちよくなってもらいたい。それはこっちの押しつけかもだけど、私の心意気! そういう循環だと思うから」

ハナちゃんたちが私たちと飲んでくれた理由が分かった気がする。
中目黒駅前で途方に暮れていた私たちを、救ってくれたのだろう。恋バナが話したかった訳でも、タダ酒が飲みたかった訳でもない。これは彼女たちなりの、年下への心意気だったのだ。

次々に空いていくお酒と、繰り出されるハナちゃんからの熱いエールに、頭がぼーっとしてきた。
いろいろな話を聞いたものの、トータル「なんて自由でまっすぐな40代なんだ」という感想だった。「こうすべき」と固定概念に縛られる様子が全くない。
結婚したら自由にできない? そんなんつまんないよ!
したいことすればいいしどんな形でも、いつだって素直でありさえすればいい! そんな気持ちのよいまっすぐさが貫かれていた。

どうしてここまで達したんだろう…? そんな疑問が私の中でフツフツと湧いてきた。それと同時に、1つだけハナちゃんが中々語ろうとしない事柄を聞いてみた。「子どもを、つくろうとはしなかったの?」

持ち前の明るさを全く損なわずに、ハナちゃんは即答した。

「「したした、出来る限りのことはした! んで無理だったから、もう今はとにかく楽しさを求める人生になってるんだよ!」

次回、ハナちゃん最終回。
不妊治療を頑張りながら子どもはできず、子どもがいない人生を歩む決意をした話。そこから語られる、「女が歳を取るということ」。

初めましての恋バナ図鑑、まだまだ続きます。街ゆくリアルな恋バナがここにある…!

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Text/舘そらみ

次回は<「今が楽しければ、この先だって楽しいはず」“子を持たない”を受け入れた先輩女子の人生への誇り>です。
中目黒で出会って初めましてで7時間弱べろべろに酔っ払いながら恋と人生について語ってくれたハナちゃん。不妊治療を乗り越えて”子を持たない”を受け入れた彼女が語る、自分の人生を楽しく生きる心持ちとは。