込みあげる疑問や不安が、より彼女を駆り立てる…
話を聞けば聞くほど、ちささんは「信じたい」と「信じられない」の間でこじれているようだった。それは、どうしても見逃せないいくつかの“気になる点”があったからだ。
その1つ目は、“時系列”。
「私と別れたのが2012年、向こうが結婚したのが2013年10月。それで、2015年の春に私に連絡してきてるんだよ?」
年号で覚えているのが実に切ない。自分の状況を整理してどうにか客観視しようという気持ちが見て取れる。
自分と別れてからたった1年半後の結婚、そして新婚にも関わらず寄こす連絡。どうも、気持ちが悪い。
次に気になる点、2つ目は“奥さん像”。
ちささんは、奥さんをネットで検索した。「ストーカーチックだよね」と恥ずかしそうに語るちささんに、全員で叫ぶ。「いや全然! 調べたくなる気持ち超分かるから! それくらいするから!」
一体どんな女性と結婚したのか、気になってしょうがないのも当たり前じゃないか!
「彼と奥さんの、結婚式で見つめ合う幸せそうな写真を見てしまった。奥さんの顔を見て、“あ、私と同じジャンルだな”って思った」
同じジャンル!!! 思わずその場で、奥さんのfacebookを検索してみる。そこに写る姿は、たしかにちささんとどこか似ている…「同じジャンルなのって喜びなの? 悲しみなの?」という私の問いに、ちささんは苦しそうにつぶやく。
「喜びも悲しみも無くて、同じ系統だなってただ思うだけだよね。あと、この人と私、普通に会ったらすごい仲良くなれそうだなって思う」
あー、キツイ。聞いている方がキツイ。たしかに奥さんのプロフィール写真は、容姿や外見だけでなく、人が良さそうな雰囲気まで似ている。
最後、気になる点は“今の彼とちささんの距離感”。
彼とは月に1回くらいしか連絡を取り合わない。会ったのも、この1年でたったの1回だ。彼の車で、昔話をするだけで終わったという。
この気になる点たちが、今のちささんを駆り立てているように思う。
別れてすぐの結婚、そしてその相手は自分と似ているということ。これらは、ちささんの心をザワザワさせると同時に、どこか期待させ、どこか「待っていよう」とさせるに十分だ。
だって、嫌いで別れたんじゃないんだから。別れたくないのに、別れたんだから。
その遠めの距離感も、「何も言わずとも通じ合える間柄」と思わせるのに十分だ。過去に付き合っていたのにも関わらず、キスもセックスも無い関係は、「特別」を感じさせる。 実際、ちささんは言う。「はっきり言葉にするわけじゃないけど、将来的に一緒にいよう感はある」。
そんなの、部外者は否定できない。もしかしたら実際、2人の間には言いようのない絆があって、別れた時からずっとずっと思いが続いていて、今やっと歩み寄り始めている可能性だって、ゼロではない。今の奥さんと離婚をして、ちささんと一緒になろうと彼が本当に考えていることだって、あるかもしれない。
でも、本当にそんなことあるんだろうか…。
「いや、おかしいのは分かっているんだけどね」
そう、ちささんだってバカじゃないから、そんな都合よくいかないことも分かっている。
でも、いくつかの気になる点が「どういうことなんだろう」という小さな不安を植え付けた。不安があると、人間「そんなハズない!」って思いたくなる。小さな不安がある恋愛の方がどんどんのめり込んでしまうのは、よくある図式だ。
もう一度、突っ走るしかないんだろう
「ちささんは、その男に一度突っ走るしかないよね」
話を聞いていた3人の、共通の結論だ。
正直、その男が良い男には思えないし、都合の良い女扱いされている可能性が、ものすごく感じられる。でも、一度いくしかないのだろう。
「分かってるのよ、全部。男のダメさも分かってる。結婚してるのに元カノに連絡してきて期待持たせるようなところも、幻滅もしている。でもさ、彼だけは特別って思っちゃう気持ちは、止められないんだよ」
もう、ちささんの中で答えは出ている。葛藤も十分、している。
「たとえ本当に彼ともう一度やり直したとしても、彼をもう一度信じ切れる自信はないし、見てしまった結婚式の写真もきっと永遠に忘れられない。でもさ、こんな心のまま次の人になんていけないよ」
そうだね、そうだよね。
だから、「元カレと一度とことん行こう!」と私たちは何度目かの背中を押した。それは、「盛大に傷ついてこい!」と同義語だった。
そうでもしないと、ちささんはもうどこにも進めない。
宴はお開きとなった。「このお店の中で誰が一番タイプ?」なんていうくだらないやり取りを最後にして終わった。最後にふざけて笑っとかないと、今日を元気に終われない。そんな処世術が、大人な4人にはもう既に備わっていた。
さて、一回目からあまりにも充実した出会いとなった新橋でのナンパ旅。
次回は、ちょっとサブカル女子たちを探してみようかな、の予感。どうかどうかお楽しみに! 街ゆく人のリアルな恋バナが、ここにある…。
≫止められない恋をしよう≪
Poiboyとは
AM編集部がプロデュースした女の子のための恋愛応援アプリ。女性が男性をお気に入り登録(通称ポイ)することからコミュニケーションが始まる安心の女性主導設計。好みの男性をみつけたり、女性同士でオススメしあって盛り上がったり。恋愛中の感覚を擬似体験することができます。
- 1
- 2