フェチってやつは…

 私は、言葉オタクだ。喋り言葉が大好きだ。
電車の中でイイ言葉に出会った時は、降りる駅を忘れるくらいその言葉をずっと反芻して、その言葉が少し変化したバージョンとかを妄想して、もう目がキラキラしてしまう。

 この前サラリーマン2人が並んで、
「アダルトの方っすかねえ」
「どう考えてもアダルティー的なアレでしょう」って言ってて、もうそのやり取りに萌えて萌えて。
何の話をしてるのかもよく分かんないところとか、車内でアダルトって言っちゃう感じとか、アダルトに「~方」つけた濁し方とか、アダルトがアダルティになっちゃう感じとか、アダルティーなアレでしょうっていう「ア」の連続とか。もう最高で、そのあとずっと1人で脳内でこのやり取りを繰り返して悶絶していた。

…フェチってやつは。

 そう、こんなレベルのしょうもない言葉で全然いいの。どこかいびつであれば。どこか予想外な言葉を放つ人であれば、もうそうしたら続く気がする。

 若いのに一人称がたまに「わたし」な男とか、「腹減り減り腹」みたいなアホみたいな言葉遊びをしちゃう人とか、もうすげー好き。
そうだな、「腹減り減り腹」一つで恋にまあまあ落ちちゃうな私。
とか、擬音を多用する人とか。
「バーンてしたときに、すごいウゲッって思ったのね」なんて言われたら一晩お相手願いたい。

 一風変わった言葉使いをする人が本当に好きです。
これでした、私のタイプはこれでした。
そうかそうか、どおりで「面白い人」「優しい人」そんな定型文じゃピンと来ない訳だった。

 さあ、あなたも己のフェチを探ってみたら?「これさえ満たしたら、他は目をつぶれそう」が見つかるかもしれない。共感してくれる人は少ないかもしれないけれど。

 私のことを、「娘さん」と呼ぶ彼氏が昔居ました。なぜ私のことを「娘さん」と呼ぶのか謎でした。でも彼が私のことを娘さんと呼んでいなかったら、あんなに長いこと一緒に居なかった気がする。
彼は、私以外の人やモノも変な呼び方をする人でした。彼のことはあまり思い出さないけれど、彼が「これのことを○○って呼んでたなあ」はよく思い出します。

 フェチってやつは。

Text/舘そらみ

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