メガネ外しの快感を味わう
ああ、この発言自体がメガネ処女感ムンムンかもしれない。
メガネ玄人は、もしかしたらメガネをかけていること自体をもっと濃密に味わえるのかもしれないけれど、メガネ処女の私は、メガネを外した瞬間に思いを馳せてしまう。まだまだ未熟だ。
そうして、私は私の手でメガネ君のメガネを外したい。
左右のツルを両手で持って、ゆっくり顔から離したい。
私の手によって、相手の顔立ちが変わるのがいい。
その時の頭の位置は相手より少しだけ上。私を見上げる男性の顔から、メガネを取り除きたい。
取る瞬間、きっと目の前に手が伸びてくる条件反射で、一瞬目を瞑るだろうから、その瞬間をこっちは目ん玉おっぴろげて見ていたい。
んで、私が取ったそのメガネをそのままどこかに置こうとするときに、その手からメガネを奪ってほしい。外してから置くまでの工程の9割方私がやるから、最後に「コトッ」って置く瞬間だけ、やってくださいお願いします。置く工程の最後の20センチだけ、お願いします。
不思議だ。今、メガネ君のメガネを取る素敵瞬間を想像していたら、私の体がある感覚を思い出してしまった。
私、メガネ君のメガネを、取ったことがある。
なんだ、なんだか覚えている。
その顔から、ゆっくりメガネを引き抜いたこと、ある。
誰だ? この記憶は誰だ? 私は誰のメガネを外したんだろうか。
しかもそのメガネを外すとき、私はその人の膝に座っていたように思う。
もうそれは、つまり、完全に、そうじゃないか。
全く思い出せない、不思議なメガネ君との記憶。私はメガネ外しの快感を味わったことがある女だったのか。
メガネを取り外したい。至近距離で、その顔を見たい。
メガネを外した瞬間の、一瞬心もとなくなった男性の顔と、なんだか途端に締まる顔つきを、数センチの距離で見たい。
メガネくーーーん。
メガネ取らして―――。
Text/舘そらみ
初出:2016.03.30
たまらない表情が見れるメガネ男子と恋したい!
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