これからの童貞の話をしよう、いや、これからの童貞マインドの話をしよう。童貞マインドは必ずしも男子だけが向き合うべき問題じゃない。男女問わず、誰もが当事者になり得る話なのだ。
「童貞マインド」=そもそも相手に興味・関心がない
先日、「童貞はマインドだ」という名言を残した年下の友人男子と某所で再会した。彼は会うなり私をまじまじと見て、「あっ、髪の毛切りました? 可愛い〜」と、小慣れた様子でほめる。「えーありがとう。でもあんまり満足できてないんだよね〜」と言うと、若者は10秒ほど私を無言でまっすぐに見つめて、こんな風に続ける。「んー……明子さんは、毛先をふわっとさせるともっと可愛い」
仲間内では「プロ」と呼ばれるほどたくさんのモテテクニックを持つ若者。新しい髪型をほめるだけにはとどまらず、じっと見つめて、からの助言という合わせ技をさらりと繰り出す。遊び慣れた男のオーソドックスなやり方だろうが、挨拶代わりにやられたって、やっぱりいやな気はしない。
理由は具体的に3つある。1つは「違いに気づくほどあなたのことを普段から見てるよ」がストレートに表されているから、2つ目は私の髪型を検討するために、その瞬間の彼はたしかに自分の時間を私に費やしてくれているから、そして3つ目は、そんなベタなやり方で恥ずかしげもなく人としての好意を示してくれているからだ。
そんな彼の言う「童貞マインド」はこういった振る舞いの対局にある。つまりこういうことだ。
1.相手のために時間や労力を微塵も使いたくない
2.先に好意を示したら負けだと思っている
3.そもそも相手に興味・関心がない
3つの中でも特に3が本質的な問題だ。端的に言ってマインド童貞は、相手に興味がない。いやいや、モテたいし付き合いたい、セックスしたいと思うのは相手あってのことじゃないですか、と思うかもしれないけれどそれは単にモテたり付き合ったりセックスしたりしていい気分になりたい、自分の欲求を満たしたいというだけの話であって、自分をいい気分にさせてくれるなら相手は別に誰でもいいのだ。
そりゃ誰にだって自分の快楽を追求する自由はあるし、自分を楽しませる能力が低く不満ばかり言ってる人とはお近づきになりたいと思わない。自分の欲求を満たすためだけに動くのはぜんぜんいいんだけど、それなら一人でやればいいのだ。いい大人なのに夜中にメッセンジャーの上の方にいる人から順番に「セックス」と送ってしまった株式会社童貞は、男同士の飲み会で「セックス」と女子にメッセージを送る冒険的行為を楽しみたい、自分の欲求を満たしたい、そのために女子をいきなり身勝手に利用しているのだ。その行為で、小学校のときに教わった「相手の気持ちを思いやろう」ができてない。
そしてこれは、女子にモテるとかモテないとかいう話の前に、誠実なコミュニケーションが取れるかどうかという問題で、相手に適切な興味、関心をもてない、相手の気持ちを思いやることができない童貞マインドでは、男女関係に限らず、不誠実な人間関係しか育めないのだ。