歌に背中を押される人生

 だけど、私は今年の5月末でOLを辞め、ニューレディーおじさんとして
女装で世に出て行くことを決めました。
親も私が女装をこっそり続けているというのはネットや私の姉からの情報で
知ってはいましたが、まだハッキリと告げたことはありませんでした。

 私は意を決して6月に親にその事実を告げに行きました。
女装に誠意なんてあるのかよ、という意見もあると思いますが、
私ができ得る限りの言葉と誠意と覚悟と優しさと感謝を携えて会いに行きました。
実は20代の頃同じことをやって、失敗をして家を追い出されたことがあります。
でも、私はそこから社会人として経験を積み、コミュニケーション能力も経済力も
鍛えました。もし駄目ならきっぱり一人で生きて行く覚悟もできました。
その覚悟が伝わったのか、親が歳を取って丸くなったのか、今回は渋々受け容れられました。

 そんなことがあった後で初めてやった札幌でのボンボワヤージュ。
やりながら、あぁ、私はこのマスターの悲しみを胸に、
勇気を出して一歩進んだ
と思いました。マスターの悲しみがあって、
それを繰り返してはいけないと思い、踏み出せた一歩だなあと思いました。

歌のチカラを信じる心

 歌の力に動かされて人生が変わっていく。
歌にはそんな不思議な力があります。
私は札幌の地下のクラブでショウをやり終えた時、十字を切って
心からオカマバーのママの冥福を祈り、感謝をしました。
この歌に、このショウに巡り会えて良かったなぁと思いました。

 もしもあなたが辛い時には好きな歌、心に引っかかっている歌を
大事にしてみてください。出来れば口に出して歌ってみてください。
その歌はきっといつか、あなたの背中を押してくれる翼になってくれると思います。
私はそう信じています。

Text/肉乃小路ニクヨ

次回は <「東京以外」をうらやましいと思う感覚。旅した時間に考えたこと。>です。
旅することで感じるのはその土地らしさ、だけではなく普段自分が住む地域との落差についてもです。東京や関東圏以外での生活を経験したことがないニクヨさんが、札幌でのショウで考えたこととは?