出来上がってカウンターに運ばれてくる天丼を見ると、ネタが丼から零れ落ちそうに盛られています。それを見て何度も「すごい量だなぁ」「大きいなぁ」「お腹いっぱいになりそうだなぁ」とくり返すカップルの男性。
フードコートの天丼でそんなに驚けたら、人生楽しいだろうなぁなんて、自分の擦れっからし具合をちょっと反省しながらも、注文レジまであと数人というところで、男性は続けてこう言いました。

「こんなに量多いと、並で十分だよなぁ！　で、〇〇ちゃんは、何天丼にする？」

えっ、まさか、彼女にちょっとだけお値段の張る上天丼や江戸前天丼を頼ませないために、量の多さをアピールしつづけていた！？　……などと考えるのは、性格の曲がったわたしのうがった見方で、ただただ思ったことを口から垂れ流していただけかもしれません。けどどっちにしても、そう言われた彼女が「江戸前がいい」と言いにくい雰囲気があったことは確かで、実際に彼女が頼んだのは並天丼でした。

お会計は男性のほうがまとめて払っていたから、例え意に反した並天丼でも、ありがたくいただくべきかもしれないけれども、いろんなメニューの中から好きなものを選ぶことができるのがフードコートの醍醐味だっていうのに、それを無意識であっても妨害する人ってどうなのかなぁ……ケチ心からか支配欲が強いのか、どっちなんだろうと思いながらいただいた江戸前天丼は、さすがにボリュームが多くて全部は食べきれなかったけれど、残った分は「余ってるなら、食べてもいい？」と夫が喜んで食しておりました。完食。

Text／大泉りか