尊敬できない人に性欲は湧かない

わたしが、慣れない育児をてんてこ舞いで白目を剥きながらこなしているのに、夫が涼しい顔でスマホゲームをしているのも苛立ちました。「ちょっと、ミルク作ってくれる?」と頼んでも、泣いている赤子を横目に、「うん」と答えながらスマホを手放さず、一段落ついてから、ようやく調乳……。そんな日々の行動に、最初は怒りを抱いていましたが、だんだんとそれが「なんでこの人、こんなに出来ないの?」という幻滅に変わってきました。

すると当然、夫のことを下に見るようになります。同じ日に親になったのに、自分と同じレベルで家事育児が出来ないことで、見下してしまった。すると、途端に性欲を感じなくなってしまったのです。

自分が尊敬できない人には性欲を感じられない。これはわたしの性癖のようです。もちろん、妄想の中では、痴漢や強姦魔といった、尊敬できないどころか、軽蔑されるような男性に無理やりに暴行されて興奮することもあります。しかし、あくまでもそれは妄想の中の話。現実に痴漢や強姦魔なんて真っ平です。それどころか、愛する夫であっても、見下し始めるとまったく抱かれたくなくなってしまう。まったく不思議な話ですが、こういった性癖を持っている女性は少なくないようにも思います。

セックスレスを解決し回復するには

家事育児能力に対する不満は、相手への尊敬の念を失わせ、セックスレスの原因にもなる。そんなクライシスから脱却したのは、育児家事の分担をめぐって夫婦喧嘩を再三した末、ようやく何かを掴んだらしい夫が、わたしが口を出さずとも親らしい行動を取れるようになったあたりからでした。
「最近、すごく助けてくれる」「そこ、ちゃんと気がつくの?」
そう思える瞬間が増えると同時に、ふつふつと夫に対して性欲が湧いてきた。

そう考えると、産後のあのしんどい時期に、きちんと夫婦喧嘩をして自分の不満を伝えたのは良かったのだと思います。しんどさを抱え込んで、自分ですべて背負っていたら、きっと今頃はもっと夫に幻滅していて、セックスレスになっていたかもしれません。それに何より、尊敬できない人と一緒に生活をするだなんて願い下げです。

お互いに甘えもある夫婦の関係を調整するのは、簡単なことではない。けれど、それを諦めた時こそが、夫婦のクライシスの第一歩ではないでしょうか。

Text/大泉りか

初出;2018.09.01

次回は<男は繊細?打ち上げにしれっと参加しようとする「誘われ待ちオジサン」>です。
イベントが終わって会場付近でたむろしていると、しれっと関係者のフリをしながら、ずーっと一人で突っ立って打ち上げに誘われるのを待っているおじさん……。そんな繊細な彼らを大泉りかさんが分析します。