「魔性の女」の中学時代
皆さんは、“魔性の女”を目撃したことがありますか? わたしはあります。
彼女との付き合いは古く、中学時代に遡ります。わたしは小学校3年生の時に1回、そして中学にあがるタイミングでもう1回、計2回の転校を経験しているので、今でも親しくしている幼馴染というものが存在しません。いまだに繋がりを持っている一番古い友達、というとその彼女になります。
彼女とは、中学1年の時に同じクラスでした。転校生のわたしと、中学校区の境界ギリギリに住んでいた彼女は、どちらも小学校時代の同級生がほとんどおらず、席が近かったこともあってすぐに仲良くなりました。
色黒でくるくるのショートカット、南国系のハッキリした顔立ちだった彼女。一目見た時の印象はモンチッチだったし、聞けば彼女の小学校時代のあだ名はやはり「モンチッチ」でした。色黒ショートカットというルックスを裏切らず、彼女はスポーツ少女で、軟式テニス部に所属していました。勉強も出来るほうでしたが、周囲からは「優等生キャラ」というよりも「スポーティーで中性的な女のコ」として見られていたように思います。
モンチッチが魔性の女である片鱗は、当時はあまり感じて……いや、いま振り返ると、思い当たることがあるのです。
あれは中学2年生の時。O先輩から、モンチッチのことを好きになったと相談を受けました。O先輩は、わたしが憧れていていたI先輩と、同じグループに属しています。ということは、モンチッチとO先輩が付き合ってくれれば、自然とわたしとI先輩との距離も縮まるのではないか。そう考えたわたしは、ふたりの間の橋渡しを請け負うことにしました。モンチッチのほうもまんざらではない雰囲気で、ふたりは付き合い始めたのです。
しかし、そこで問題がふたつ起きました。ひとつは、わたしのクラスで最も権力をもつ女子生徒が、実はO先輩のことを好きだったということ。もちろん、本来そんなことは、わたしには何も関係のないことです。が、困ったことに、そこにもうひとつ問題が重なりました。
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