ひとつだけ結婚相手にお願いしたかったこと
結婚を機に、パートナーに何かをやめて欲しいと頼まれたり強いられたりしたという話は、よく耳にするし、実際に目にもします。例えば、喫煙、飲酒、時間・お金のかかる趣味や、それこそ仕事。さらに、異性の友達との関係を断ってもらいたいだとか、同性の友達であっても頻繁に夜遅くまで飲むのはやめてほしい、など。けれども、わたしたち夫婦の場合、結婚しても互いに生活スタイルを崩すつもりは一切ない、と合意していました。
なぜならば、モノを書くことを生業としているわたしにとって、同性異性問わず、いろんな人に会って話を聞くことは、作品を作っていく上で必要なことでもあります。デザイナー兼バーテンダーの夫も、知見を広げることが作品にフィードバックされるし、バーテンとして人を楽しませる話題をたくさん持っていたほうがいい。
だから、結婚したところで、夜になればわたしは友人と飲みにいき、夫もまた、自分の働くバーの終わった後に、常連客の人たちと朝方まで飲んで帰ってくる、それまでの同棲時代とまったく変わらぬ生活を送るつもりでした。
けれども、ひとつだけ、結婚したら相手にお願いしたかったことがありました。それは、結婚指輪をしてもらうことです。
ちょっと乙女な感じで恥ずかしいですが、男の人が薬指に指輪をしてるのって、ちょっとよくないですか? むしろ、既婚者なのにしていない男性を見ると「なんでしてないのかな」と疑問に思うし、ともすれば「あわよくばモテようと思ってる?」といぶかしんでもしまう……のは、わたしが若い頃に遊んでいたオジサンたちがみな、結婚指輪をしていなかったせいだとも言えます。
新婚旅行で指輪を買おう
というわけで、結婚の記念に指輪を買おうと考えたのですが、困ったことに、わたしも夫も貴金属にまるで興味がないのです。適当な指輪でいいと思っても、何が適当なのかさえわからない。途方に暮れて、「指輪、どこで買う?」と話し合ったところ、「それなら、新婚旅行先で買おうよ!」と、夫が素晴らしいアイディアを提案してくれたのでした。
新婚旅行は、ドバイから乗り継いで、南アフリカに住んでいる友人に会いに行き、帰りはイタリアとスリランカに寄るという、冒険感の溢れる旅程でした。どこで買えばいいかリサーチしたところ、ドバイにはゴールドスークという金のマーケットがありました。
「新婚旅行先で買った」という結婚指輪の付加価値は、旅行好きのわたしたち夫婦にとっては、最高のメモリアル! これ以上の思いつきはないと喜び勇んで、入籍の3か月後に、新婚旅行へ旅立ったのでした。