どうでもいい店のどうでもいいランチ

立派な海老天や鴨南蛮を出してきそうな、ちょっとした老舗風の店ならともかく、いかにも街の蕎麦屋といった平凡な外観の店です。外出したついでに、どうしても他に選択肢がないのならともかく、わざわざランチを食べるために外出して入るような店ではない。そもそも、蕎麦が食いたいなら、家にいつでも乾麺がストックしてある。もうちょっとテンション上がるもの食べない? と提案しかけたところで恋人は言ったのです。

「ここの蕎麦屋、前を通るたびに、どうなのかなって気になってるんだけど」

入るほどの店でもない、と毎回素通りしつつ、たしかに気になってはいます。「駅からちょっと離れていて、さして賑わっているふうにも見えないけれど、果たしてやっていけているのだろうか」とか、「店主らしきおじいちゃんがクラシカル自転車スタイルで配達しているのを見るけれど、よろよろしていて転びそうで怖い」とか、そういうことが。

「そういう店って、一度入ればだいたい気にならなくなるから、入ろうよ」

人が入りたいと言っている店を無碍に却下するのもあまりよろしくない。「絶対に後悔しそうだけど、ここは彼のリクエストに付き合うか」と、その日のランチは蕎麦屋で取ることに決めたのでした。

結論からいって、注文して出てきた天ざる蕎麦は、まったく想定の範囲内でした。不味くもないけれど、美味しくもない。あえて特徴をあげるとすれば、麺が更科タイプでかなり細く、ボリューム少なめ。わたしでもざる2枚は軽く行けそうな具合です。けれど、500円なりを払って、もう一枚追加するのがもったいないと思ってしまうくらいのクオリティ。

やはり恋人も足りなかったらしく、店を出るなり「まだお腹が空いてる」とつぶやき、家でレトルトカレーを温めて、がっつりランチのやり直しをする始末。やっぱり、あからさまにどうでもよさげな店に入っても、どうでもいいものしか食えないということを再確認しつつ、「今日のランチは失敗したな」と後悔していました。

しかし、変化は後日訪れたのです。