守られなかった「2年経ったら結婚」という約束…お金のない彼と海辺の町へ

守られなかった「2年経ったら結婚」という約束

湘南のが蔵王 Josh Sorenson

先週書いた、結婚というマイルストーンが2年後に置かれた2006年の冬。彼と付き合った当初は26歳だったわたしは、誕生日を越して29歳になっていました。その2年と少しの間に処女作の小説を1冊出版することが出来たものの、さして売れることなく、新刊が出ることもなく、常駐フリーランスとして受けていた編集部の仕事もずいぶんと飽きがきていて、何か人生に新しい展開を求めていました。

最初はしんどかった恋人の束縛も、付き合ううちにほどよく慣れてきて、

「飲みに行く用事がある日は、あえて連絡しない」
「飲みに行ったことを報告しない」
「飲みに行ってる最中に電話がかかってきたら、仕事の途中を抜けて同僚とご飯を食べているふりをする」

といったふうに、あえて刺激を与えないことで切り抜ける術を身に着けていました。だから、彼の「いまは付き合い始めだから、お互いのちょうどいい距離感がわからないで喧嘩ばかりだけど、たぶんそのうちわかってくるよ」という言葉通り、“ちょうどいい距離”で付き合えているように思えました。

この頃、一番面倒くさかったのは、会う度に母親が「いつ結婚をするんだ」と急かしてくることでした。「わたしがしたい時にするから、放っておいて」とハッキリと言えるようならばなんの問題もなかったと思うのですが、30歳手前になってもわたしは娘気分で、だから親の言いつけを守らなくてはならないと思っていました。

しかし彼は「2年」という約束をすっかり忘れたかのように、結婚について口にすることはありませんでした。けれど、その理由をわたしはなんとなくわかっていました。付き合ってから知ったことでしたが、彼には少なくない借金があって、それが結婚を躊躇させているように思えたのです。