「2年経ったら結婚しよう」

しかし、お互い歩み寄るはずが、わたしが彼のために我慢するばかりでした。なぜなら、喧嘩の原因はすべて、わたしの行動を彼が気に入らないのが発端だったからです。

仕事の飲み会で昔の恋人と一緒になったと言えば怒り、原稿に3Pをした経験があると書けば喚き、北海道のフェスに友達と行こうと思っていると告げれば「俺は金も休みもなくて行けないのに」と嘆き、リリー・フランキーのところに原稿を取りに行ったと話せばその夜に突然「仕事で有名人と絡んだ自慢するやつって嫌だよな」と吐き捨てる。
彼がいちいちわたしの行動に傷つき、「俺のことも考えてくれ」と言うたびに、わたしはだんだん、自分が加害者であるような気分になってきました。

けれども異性関係に限っては、嫉妬されて嬉しくないこともなかった。その嫉妬がつまらなければつまらないほど、「彼に愛されている」と強く実感が持てたからです。愛されている実感をさらに強くしたのが、「付き合って2年経ったら結婚しよう」という彼の言葉でした。実はそれまで、わたしは付き合った相手に、きちんと「結婚しよう」と言われたことがありませんでした。だからその時、相手が結婚まで考えていてくれたことを知り、驚きながらも嬉しかったのです。

どんなに喧嘩が多くても2年後にはマイルストーンが置かれている。彼の言葉は、希望に思えました。けれどもそれは、わたしを6年間縛り続ける呪いの言葉だったのです。

――次週へ続く

Text/大泉りか